サービスを調整すれば7割程度までカットされる

ここで、これまで見た政府見通しを離れて、原理的にありうる政策選択肢を考えてみよう。そして、具体的な姿がどうなるかを、2020年と2040年の比較において計算してみよう。

給付調整型の場合には、つぎのようになる。まず、先に示した人口構造変化の数字により、2040年における社会保障負担の原資は、労働力人口の減少に伴って、2018年に比べて5978÷7516=0.795倍になる。

したがって、65歳以上の一人当たり受給額は、それを高齢者人口の増加率で割って、現在の0.795÷1.101=0.722倍になる。つまり、社会保障制度による給付やサービスが、約4分の1だけカットされるわけだ。

日本の年金制度の概念。
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負担調整型の場合には、社会保障の給付は、高齢者人口の増加によって、現在の1.101倍になる。これを現在の0.795倍の就業者で負担するのだから、一人当たり負担額は、1.101÷0.795=1.38倍になる。つまり、4割程度の負担引き上げになる。

収入の3分の1が社会保険料に消えていく

「負担が4割増える」と言っても、具体的なイメージを捉えにくいかもしれない。そこで、もう少し具体的な数字を示そう。

日本円マネーファイナンス危機グラフグラフ
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総理府統計局「家計調査」によれば、2021年において、2人以上の勤労者世帯(全国平均)が負担する税・社会保険料は、月額で、直接税が4万7242円、社会保険料が6万5331円で、計11万2573円だ。勤め先収入55万973円に対する比率は、20.4%になる。

社会保障給付の財源としては、社会保険料の他に公費(税で賄われるもの)もあるので、税・社会保険料負担を問題としよう。「負担が4割増える」とは、11万2573円が15万7602円になり、勤め先収入に対する比率が、20.4%から28.6%になることだ。つまり、現在は収入の約5分の1であるものが、3分の1近くになるということであり、大きな負担増だ。

なお、2040年は「就職氷河期世代」と呼ばれる世代が退職を迎える頃だ(「就職氷河期世代」は1970年から1982年頃に生まれた世代であり、2022年で40歳から52歳であり、2040年には58歳から70歳になる)。「団塊ジュニア世代」とは、1971年から1974年頃に生まれた世代であり、「就職氷河期世代」に含まれる。彼らは、現在は48~51歳であり、2040年には70歳前後になる。