少年硬式野球から子供が減っているワケ

しかし近年、ボーイズなど少年硬式野球はいろいろな問題点が指摘されている。

ひとつは費用が高額なうえに、親の負担が大きいこと。

硬式野球の用具は軟式より高価だ。また硬式専用球場を借りる費用も高い。体を大きくするためにプロテインを摂取するのも当たり前だ。

最近はレギュラーになるために別途「野球塾」に通う子供もいる。金銭だけでなく、親は「お茶当番」として監督や選手の飲料を用意する。また遠征に車を出すことも多い。

そしてエリート主義。

少年硬式野球大会の多くも甲子園同様トーナメントであり「負けられない戦い」だ。大会ではレギュラーが固定され、控えの出場は限定される。親からは「同じ月謝を払っているのに」という声も聞こえる。また目先の勝利のために過酷な投球をさせたり、選手を罵倒したりする指導者も少なからずいる。

さらに言えば「アップデートしない指導者」。

「球数制限」にはしぶしぶ従うものの、練習では投げ込みをさせるなど選手の肩肘への配慮をしない。今や重視される準備運動だが、「勝手にやっとけ」とばかりにベンチで談笑している指導者もいる。

最近は「中学は成長途上の10代前半の子供にハードな練習を強制しがちな硬式より緩やかな指導が多い学校部活の軟式の方が将来伸びるのではないか?」という認識が広まりつつある。

特に投手は巨人の菅野智之、今季からメッツの千賀滉大、広島の森下暢仁、栗林良吏などトップクラスが軒並み軟式出身だ。

「ボーイズなど硬式出身は、指導者が目先の勝ちを求めるあまり、才能の先食いをする」と言う人もいる。こうした評価もあってボーイズなどの少年硬式野球のチーム数は合わせて1500ほどで足踏みし、選手数は減少傾向にある。

そんな中で堺ビッグボーイズは、小・中学部合わせて180人もの選手を抱えている。

なぜ堺ビッグボーイズだけ生徒が集まるのか

当然のことながら堺ビッグボーイズでも親は月謝(入会金:1万円、月会費:1万7000円=中学部)を支払っているが「お茶当番」はなし。「フレーチャ」をはじめ最新の機器やトレーニング法を取り入れている。

またOBの筒香嘉智など著名な選手、指導者がゲストで子供を指導する。昨年4月にはオリックス、日本ハム、ヤクルトで活躍した大引啓次氏が内野守備の指導をした。

小学部を指導する筒香嘉智
筆者撮影
たびたび指導に訪れるメジャーリーガーの筒香嘉智(撮影は2018年横浜DeNA時代)

声を荒らげる指導は一切ない。投球練習から球数制限を行い、スライダーなど一部の変化球も制限している。また一般社団法人日本スポーツマンシップ協会の指導のもと、スポーツマンシップを基礎から学んでいる。この指導が評判となって、地元大阪府だけでなく、兵庫、和歌山、奈良からも選手が集まってくる。

また、堺ビッグボーイズは、他チームを退団した選手の「駆け込み寺」にもなっている。前チームでの酷使ですでに野球肘(OCD=離断性骨軟骨炎)を発症している子もいるが、チームではそういう子は無理をさせず慎重にリハビリする。

投球練習、球数も変化球の投球も制限している
筆者撮影
プロ同様に球数、変化球を制限している

車で50分かけて我が子を送り迎えしている母親は、

「前チームでは、雨で練習が中止になったら“ばんざーい!”と言っていたのですが、堺ビッグボーイズでは雨が降ると“えー! なんで?”と残念がります」と話す。