仕事ができる人の周囲にいる「控えめな応援団」

このように、相手のポテンシャルを認めながらさらなる挑戦をしてほしいとリクエストする形をつくると、現在の案を肯定しながら、改善を求めるメッセージをつくることができます。

これをコーチングでは「チャレンジ」といい、相手の可能性を信じて、現状に甘んずることなく、より強いリクエストをすることができます。

→すべての人を否定しないことが、「控えめな応援団」をつくる

余談ですが、ある映画監督は、役者の演技にNGを出さないそうです。

「いいね。素晴らしいね。もう1回、別の演技をいってみようか」

と言って、何度も演技をさせて、そのどれかを採用するのです。

これも、「否定しない技術」ですね。

セリフを覚えたうえで感情をつくり込んでいる役者さんに対して、「なんだ、その演技は! 学芸会じゃねぇぞ!」なんて言えば、その役者さんは監督に嫌悪感や、苦手意識を持ちかねません。そして、そんな些細ささいな言葉ひとつが徐々に積み上がり、結果的に作品全体の品質に影響する、なんてことも起こりうるでしょう。

とくに、上司と部下の関係においては、「この上司の頼みなら、やってもいいな」と思わせるのか、それとも「この上司の頼みなんて、絶対に聞くもんか!」と部下に思わせるのかによって、チームの成果は大きく変わってきたりします。

実際に仕事をしている中で、「上司のことをこのうえなく好きになる」ということは極めてまれだと思います。反面、上司のことを激しく嫌いになるということは十分に起こりうるでしょう。

もちろん、チームの中には、上司のことを好きでもなければ嫌いでもないという層が意外と多いですよね。むしろそのほうが大多数かもしれません。

こういった方々とどんなコミュニケーションを取るかが、チームのパフォーマンスに大きな影響を与えたりします。

会議室でプレゼンテーション
写真=iStock.com/courtneyk
※写真はイメージです

あなたは、どんなコミュニケーションを取っているでしょうか。

大事なのは、「好かれよう」とか「嫌われるのを避けよう」と考えるのではなく、すべての人に対して「否定しないコミュニケーション」を習慣にすることです。

先ほどの映画監督のような工夫があれば、多くの人は「どちらかといえば、協力してあげてもいいかな」と、控えめに好意を寄せる応援団のような存在になってくれる、というのが私のこれまでの経験からわかっていることです。

この「どちらかといえば協力してくれる、控えめな応援団」の存在が、仕事を進めるうえで、ものすごく頼りになります。

「仕事ができる人は、周りの人たちみんなが、その人のために動いてくれている」という話を聞いたことがありませんか。

あれは、仕事ができるといわれる人たちが、「控えめな応援団」をたくさんつくることに成功しているということなのです。

繰り返しますが、控えめな応援団をつくるには、否定しないこと。そして、否定したいときも、相手が否定されたと感じない(感じにくい)言葉を選ぶことです。

それをぜひ、意識してください。