同僚や会社の「運の流れ」に乗っていくことも重要

たとえば運を持っている人と一緒に仕事をしたり、運の流れに乗ってぐんぐん伸びている会社で働けば、おのずと運が回ってくる可能性は高いだろう。

先頃日本電産の新社長に就任した小部博志は創業時からのメンバーであり、大番頭として日本電産をずっと支えてきた人物である。大学の後輩であり、そのつき合いは妻よりも長い。

会社をつくったとき、私は小部ら3人の社員を前に将来売上高1兆円の会社にするぞと宣言したが、彼はそんな大ボラに半分あきれながらも、辛抱強くずっとついてきてくれた。私とともに血のにじむような努力を重ねて、今日までともにやってきた。

彼は自分でも言っているが、強いリーダーシップでぐいぐい社員を引っ張っていくようなタイプではない。だが、今回社長を引き受けてほしいと依頼したのは、彼が日本電産の文化や価値観といったものを、細部にわたるまで隈なく吸収し尽くし、それを全身で体現している存在だからだ。

企業の文化や価値観といったものは、その企業にとって言わば背骨である。日本電産はこの背骨をたくましくすることで、ここまで成長してきた。さらなる飛躍に向かうには、もう一度原点をしっかり確認する必要がある。その大きな責務を担う中核として、彼は最適任なのだ。

もし私が彼と出会わず、従って日本電産という会社と縁がなかったのなら、売上高2兆円近くの企業の社長などにはなっていなかっただろう。社長になったのは、もちろん本人の途方もない努力もあるが、同時に会社が持つ運気に恵まれたからともいえる。運は、自家発電のように自力でひたすらつくり出すだけでなく、運を持っている人間や運が集まっている場所に赴くことでもつかめることがある。

もちろん縁ができても、そこでちゃんと努力をしなければ、運はすぐにすり抜けて、どこかに逃げてしまうことは言うまでもない。

働いていた5つの会社がすべて潰れた応募者

とある有名な会社の社長は採用試験のとき、運がいい人を採用するという話を聞いたことがある。面接の時に「あなたは自分で運がいいと思いますか?」と聞くのだそうだ。きっと運気のよい人がたくさん集まれば、会社の運気もよくなるという理屈なのだろう。

私は採用試験の面接で、この人は運がよさそうかどうかなどということにはとりたてて関心を向けない。それよりは、会社に入ってから真面目に努力できそうかどうかを大事な判断基準にしている。

面接
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以前、面接を受けに来た人の履歴書を見て、思わず「へぇ~」と驚いたことがある。それまでに5つの会社を経ているが、どの会社ももれなく倒産していたからだ。1、2社潰れたというならまだしも、5社すべてはかなり稀だろう。これを「運が悪い」と言わずして何と表現できようか。