「建てておしまい」からの脱却が進んでいる

近年、「エリアマネジメント」という言葉がまちづくりの業界で広く認知されています。一言でいえば、民間セクターの団体が「地域のクリーン&セーフ(清掃と治安維持)を遂行するとともに、地域価値を高めていく一連の活動」のことです。

それぞれの地域実情に合った形で、公共空間の使い方を自治体、地域住民に諮りながら、もっと多様な使い方ができるように「開いて」いく。これにより公共空間の管理コストが下がり、かつ公共空間で一定のルールの中で行った収益事業の一部を公共還元して、税金を投入しなくても公共空間の維持や質的向上が図れるという仕組みです。

武蔵小杉にはすでに「NPO法人小杉駅周辺エリアマネジメント」という団体が組成されており、タワーマンション住民や地域団体のキーパーソンなどを中心に活発に活動をしています。

以前と比べると、「建てておしまい」ではなく、各施設とも魅力的な店舗を誘致すると同時に、豊かな広場空間を公開し、コミュニティ形成にも気を配るようになっています。

殺風景な駅前広場を魅力的な空間に再開発

分かりやすい変化のひとつは、「こすぎコアパーク」という駅前広場活用の事例です。

この広場空間は2013年に「武蔵小杉駅南口地区西街区第一種市街地再開発事業」を施行したことによって生み出されたのですが、不必要なフェンスに囲われていて、歩行者動線が悪いうえ、広場の設えもあまり工夫がなく殺風景なものでした。たまに地域イベントを開催する時だけ賑やかになるものの、平時は駅に向かう人が通り過ぎるばかりで、非常にもったいない状態にありました。

それを解決するため、川崎市と東急で「公園施設整備等に関する協定書」を締結し、公共性を担保したうえで、「日常的な賑わいと憩いの創出」「一体的な空間利用による回遊性」「利便性の向上」を目指して2021年10月にリニューアルオープンしました。

永らく流動を阻害していたフェンス等を撤去整理して、ベンチや緑量も増やすとともに、飲食店・食物販の店舗も入り、駅前広場に賑わいと潤いが生まれ、見違えるように素晴らしくなりました。私たちの取り組みによって駅の魅力がアップした好事例です。

Jリーグの強豪チーム「川崎フロンターレ」の本拠地として使用されている「等々力陸上競技場」がある川崎市のスポーツ公園「等々力緑地」が大幅にレベルアップされることも注目です。