ゆるい職場にいる57%が退職したいと考えている

こうした若手の厄介な状況は実は非常にシンプルな図式で整理できる。職場を「ゆるい」と感じている新入社員が、離職意向が強いという事実である。図表5からは次のことがわかる。

【図表5】「ゆるい職場」と就労継続意識(%)
出所=『ゆるい職場

① 現在の会社との関係を2、3年程度の短期的なものと最も考えているのは、職場が「ゆるいと感じる」新入社員である。「すぐにでも退職したい」が16.0%、「2、3年は働き続けたい」に至っては41.2%に達しており、合わせて57.2%がごく短い期間の在職イメージしか持っていない。
② 「すぐにでも退職したい」については、職場を「ゆるいと感じない」新入社員が最も高く、29.7%であった。これはいわゆるブラック企業、労働環境・条件の良くない状況で働いている新入社員の意向が反映されているものと考えられる。
③ 「2、3年は働き続けたい」については、職場が「ゆるいと感じる」新入社員が最も高く、実に41.2%に達している。

なお、全体では、16.2%が「すぐにでも退職したい」、28.3%が「2、3年は働き続けたい」、15.6%が「5年は働き続けたい」、13.7%が「10年は働き続けたい」、5.4%が「20年は働き続けたい」、20.8%が「定年・引退まで働き続けたい」と回答していた。

全体の結果でも44.5%が「すぐにでも」「2、3年程度で」退職したいと答えており、こうした流れは終身雇用への信用とそれを前提に就職するという認識が大手新入社員のなかで既に崩壊したということを示している。そして注目すべきは、このなかで、職場が「ゆるいと感じる」新入社員では、合わせて57.2%が「すぐにでも」「2、3年程度で」退職したいと、その数字が跳ね上がることである。

転職は「不満型」から「不安型」へ

つまり全体を総合すれば、「会社のことはゆるくて好きだが、キャリアは不安なので、退職を考えている」という若手の存在が浮かび上がる。「職場がきつくて辞める」者のグループも存在しているが、現代における新しい状況は「職場がゆるくて辞める」というグループを生み出したのだ。

私はこの「職場がゆるくて辞める」状況を、「不満型転職から、不安型転職へ変わった」と理解している。

古屋星斗『ゆるい職場』(中央公論)
古屋星斗『ゆるい職場』(中央公論)

データからは不満は相対的にはかなり減少していると言って良いだろう。そもそも不満の源泉になってきた、職場環境や上司との関係性による負荷、労働時間の長さなどは相当程度改善されたことは明らかで、リアリティショックも低減している。このため、若手になればなるほど、初職の企業への評価点が上昇している傾向があることはすでに示した通りだ。

かつての日本企業で当たり前にあったネガティブな感情、会社や職場への「不満」はなくなりつつある。しかし問題は、「不安」が高まっているということであり、特にキャリア不安にその源泉がある可能性はすでに指摘した。

これが、職場が嫌で上司と合わないことが「不満」で転職する不満型転職から、不安型転職へ変化していると言った現状である。

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