金融引き締めが円高をもたらす
【やすお】このまま購買力平価と為替レートが乖離し続けたら、私たちはずっと購買力の低さに悩まされることになるわけですか……。
【永濱】実はそんなことはありません。購買力平価と実際の為替レートはずっと乖離しているわけではなく、長期的に見ると近づく力が働くといわれています。
つまり、他の国と購買力が等しくなるように、為替レートが動くようになっているのです。これを「購買力平価説」と言います。
【やすお】じゃあ心配する必要はないですね。
【永濱】一つ付け加えておくと、購買力平価と市場レートのグラフを見ると、80年代後半から2010年代前半までは乖離していて、購買力平価よりも円高になっています。
これは金融引き締め的な環境をずっと続けていたせいです。
それでも乖離しない方向に常に圧力はかかっているので、いかに金融緩和が足りなかったかがわかります。
バブル崩壊・デフレをもたらした「プラザ合意」
【永濱】ちなみに、私は日本がバブルになったきっかけは、1985年のプラザ合意だと思っています。
【やすお】すいません、プラザ合意って……なんか世界史で聞いたことあるような……。
【永濱】プラザ合意とは、アメリカ・フランス・イギリス・西ドイツ・日本の5カ国が、アメリカの貿易赤字やドル高を是正するために為替市場に協調介入を決めたものですね。
【やすお】あ! そんな話があったかも!
【永濱】先ほどの購買力平価のグラフを見ると、プラザ合意の前までは購買力平価よりも円安だったんです。ところがプラザ合意によって急激に円高が進みました。
【やすお】なんでですか?
【永濱】そのとき、日本には次のような思惑があったのではないかと私は考えています。
プラザ合意で半ば強制的にドルの切り下げが行われたことで、「それまでは輸出競争力が強かったので外需でたくさん儲けられたけど、円高になるとそうはいかない。ならば内需を拡大させよう」と。