アクセルとブレーキを同時に踏んでいた

【永濱】そこで法人税や個人所得税の減税や、利下げなどを積極的に行いました。その分のお金が不動産投資や株式市場に流れ込んでいったわけですね。

ところが、それをやり過ぎてしまったためにバブルになってしまったのです。

【やすお】なるほど! それを聞くと、プラザ合意がターニング・ポイントだったのかもしれないと思いますね。

【永濱】ですがその後、利上げや不動産の総量規制でバブルが崩壊したのは、先に述べた通りです。

バブルが崩壊したとき、本当ならリーマンショック時のアメリカやヨーロッパみたいに、積極的な金融緩和を行って自国通貨を安くして経済を支えればよかったのですが、金融政策が常に後手に回って、ずーっと円が割高な状況が続いていきました。

その結果、デフレ経済に陥ってしまったのです。

そしてやっとアベノミクスでグローバルスタンダードの金融政策を実施して、購買力平価よりも為替レートが安くなりました。

ところが、その一方で消費税増税などの緊縮財政を行ってしまったので、経済が十分に成長しませんでした。

言ってみれば、アベノミクス時はアクセルとブレーキが同時に踏まれていたようなものです。

永濱利廣『給料が上がらないのは、円安のせいですか?』(PHP研究所)
永濱利廣『給料が上がらないのは、円安のせいですか?』(PHP研究所)

【やすお】日本はなんてどっちつかずなんだ(笑)。

【永濱】本当に……。その状態は今も続いています。

日本はずっと経済が冷え込んでいるので、本来であれば金融・財政政策で経済を過熱させる→経済の正常化により金融・財政政策も正常化→購買力平価が高まるシナリオが重要です。

でも、あまりに財政規律を守り過ぎると、むしろ景気が冷え込み財政も良くなりません。

その辺りのバランスを考慮すると、政策当局は財政健全化よりもむしろ経済の正常化を優先したほうが、かえって財政が改善するという姿が見えてきます。

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