失踪してウーバーイーツで荒稼ぎ

仕事は不安定で、仕事が少ないときは「月の半分以上が休みだった」とベトは振り返る。

毎月、決まった額面ではなく、寮費を引いた手取りが高いときで11万円あったが、仕事が少なければ6万~7万円程度だった。

こうした建設業の「日給月給」での給与支払いは2020年以降、認められていない。

ベトは監理団体を通じて再三再四、社長の暴力について相談をしたが、社長の態度が変わることはなかった。それどころか、別の日本人社員から暴力を受けることも増えた。

実習生は、転職はできないが、「転籍」はできる。実習計画で認定を受けた同じ作業であれば、受け入れ先を変更し、実習を継続することができる。

ベトは監理団体に転籍の支援を申し入れたが、ベトナム人の通訳スタッフを通じ、「別の受け入れ先はないから、今の会社で頑張って」と言われるだけだった。

2020年5月、ベトは失踪する。

監理団体は1カ月につき少なくとも1回以上、実習計画が適切に実施されているかなどを実地確認する「訪問指導」が技能実習法の関係省令で義務付けられているが、ベトが働いた約半年間で、監理団体の職員が会社に来たのは3回だけだった。

受け入れ先は論外だが、監理団体もこうした受け入れ先に実習生をあっせんし、適切な保護もできない以上、実習生を受け入れる資格はない。

失踪したベトは、東京都大田区内に住む友人のベトナム人留学生を頼った。仕事はベトナム人の間では有名なフェイスブックグループ「Tokyo Baito」で見つけた。

同様のフェイスブックグループ「BộĐội」が失踪者などに向けた違法な求人情報が多いのに対し、Tokyo Baitoは主に留学生を対象とする求人が多い。そこで「ウーバーイーツ」の配達員の仕事を見つけた。

コロナ下で料理の宅配需要が拡大しており、同様の投稿をたくさん見つけることができた。

ただ、それらの投稿は求人情報ではない。配達員のアカウントや偽造の在留カードの売買だ。

ウーバーイーツの配達員
写真=iStock.com/Ceri Breeze
失踪してウーバーイーツで荒稼ぎ(※写真はイメージです)