妻が残した現金3500万円が5年ですっからかん

しかし、幸いなことに永子さんはしっかりしていました。現金3500万円を残していたのです。さらに、彼女が個人的に入っていた死亡保険によって毎月10万円、加藤さんに振り込まれることも判明。

永子さんは長く会社勤めをされていたので遺族年金も受給できます。惜しむらくは、加藤さん自身が国民年金を繰り上げて60歳から受給していたので、5万円未満という金額になってしまったことでしょうか。

とはいえ、そのマイナスを差し引いても、妻亡き後も加藤さんには毎月25万円の“お小遣い”が支給されることになったのです。しかも、自宅は持ち家でローンも完済していましたから、初老男性のひとり暮らしとしては十分な額……と思いますよね?

にもかかわらず、加藤さんが私の事務所に来たときは、3500万円の貯金がすっからかんになっていたのです。

旅行費は仲間の分も負担、貸したお金も回収不能

永子さんの死から5年。加藤さんに何があったのかといえば、浪費癖が寂しさで加速してしまった、ということでしょう。もともとおごり癖のあった加藤さんですが、独り身になった孤独感を紛らわすため、国内旅行を幾度となく敢行。仲間の分まで負担して豪遊したといいます。

言いにくそうにしていましたが、知人にお金の無心をされたことも何回かあったようで、その回収のめども立っていないとのこと。加藤さんと話して思ったのは、そういった行動の根底には、「妻を亡くしたからといって落ちぶれたと思われたくない」気持ちがあるように思いました。死と向き合って、落ち込むときは落ち込みつつ、妻の残してくれたものと丁寧に向き合う時間をつくったほうが、私なんかからするとよほどいいように思うのですが……。