別表の数字さえ達成すれば仕事をしたことになってしまう

香田洋二『防衛省に告ぐ 元自衛隊現場トップが明かす防衛行政の失態』(中公新書ラクレ)
香田洋二『防衛省に告ぐ 元自衛隊現場トップが明かす防衛行政の失態』(中公新書ラクレ)

本来であれば、自衛隊は来るべき戦争に備え、必要な防衛力を保持しなければならない。ありとあらゆる事態を考え、綿密に準備する。これは相当な労力を要する。ところが、別表があると頭を使わなくなる。別表の数量さえ達成していれば仕事をしたということになるからだ。

私自身も当事者だったので、その心理はよくわかる。だから、海上幕僚監部の防衛部長として予算要求とりまとめの責任者となった際には、この文化を変えようと思った。

「予算が足りないのであれば、別表に書いてある数以下に削っても別にいいんだよ」

私がこう言うと、部下の若い者たちはギョッとした表情を浮かべる。みんな必死で別表の目標数値を守ろうとする。そして、背広組の圧力を受けると「それでは弾薬を削ります」と言って帰ってくる。「たまに撃つ弾がないのが玉にきず」。自衛隊のお寒い実態は、このようにして変わることはなかった。

本当に必要なのは組織文化の変革だ

海上自衛隊呉地方総監部の伊藤弘総監が防衛費の対GDP比2%以上の増額について「諸手を挙げて無条件に喜べるかというと、全くそういう気持ちにはなれない」と述べたことについて、その気持ちは私もわかる、と述べた。

繰り返しになるが、防衛予算には対GDP比1%枠があり、陸海空自衛隊は対GDP比1%をはみ出さないように予算要求項目を調整する「枠入れ」を行う。一方、防衛計画の大綱の別表には基盤的防衛力を維持するために必要な正面装備の数が書いてある。これを達成するためには、どうしても弾薬が削られてしまう。このような組織文化が見直されなければ、対GDP比2%にしても自衛隊は戦えない軍隊のままである。

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