政権浮揚策が「お得意の外交・安保」
もっとも、防衛費の増額をめぐっては、1月23日から始まる通常国会で、野党側から「防衛費増額分の財源問題」や「反撃能力の保持と専守防衛という基本路線との矛盾」を追及されることになる。
それでも、欧米歴訪で成果を上げられれば、秋葉前復興相、山際前経済再生相、寺田前総務相、それに葉梨前法相、杉田前総務政務官の相次ぐ更迭劇により、永田町で「秋の山寺、枯葉散る。杉の根元の水飲めず」などと揶揄され、内閣支持率が30%前後にまで落ち込んだ惨状はいくらか挽回できるだろう。
岸田首相は、今年4月、任期満了で勇退する日銀・黒田総裁の後任人事、統一地方選挙、そして衆議院補欠選挙(千葉5区、和歌山1区、山口4区)というヤマ場を迎える。
それまでの岸田首相の政権浮揚策は、防衛費増税前の衆議院解散をちらつかせて政局の主導権を握ることと、「春闘での賃上げ」ならびに「得意とする外交・安保」しかないのだ。
バイデン大統領にとっても外交は切り札
一方のバイデン大統領にも事情がある。
バイデン大統領は、北米首脳会議開催とアメリカ議会開幕という過密なスケジュールの中、岸田首相をホワイトハウスに招き入れる。
これは、2022年12月21日、ウクライナのゼレンスキー大統領による電撃訪問を受け入れたことに続くものだ。
80歳と高齢のバイデン大統領は、まだ2024年の次期大統領選挙に出馬するかどうかを明確にしていないが、アメリカ国内での世論調査では、「バイデン大統領の再立候補を望まない」とする声が過半数を超えている。
その最大の要因は未曽有のインフレだが、これは一朝一夕には改善できない。2023年、国際社会が陥るとされるリセッション(景気後退)もバイデン政権だけでは対処が難しい。
しかし、外交であれば、これらの会談によって、ロシアと中国を強く牽制し、「強いバイデン」を国内外にアピールできる。つまり、バイデン大統領にとっても切り札となるのは外交ということになる。
台湾統一は習近平総書記にとっても、日米にとっても負けられない戦になる。迎え撃つ形となる日本やアメリカにとっては、習近平指導部の「コロナ放置政策」によってできた1~2年の猶予が、まさに勝負どきなのだ。