効き目のない中国製ワクチン接種を奨励

筆者が注目したのは、習近平が新年のあいさつを収録した執務室に、江沢民、胡錦濤といった歴代の総書記経験者と一緒に映った写真が飾られてあったことだ。これは、国内のさまざまな声に配慮し、団結を求める意図があったからにほかならない。

さらに背景を探れば、国民全員を感染させることでウイルスの変異株への免疫をつける狙いがあったとも考えられる。

中国政府はワクチン接種を奨励しているが、習近平総書記は、シノバックをはじめとする中国製ワクチンに効き目がないことなど百も承知だ。

しかし、そのワクチンと「ゼロコロナ政策」で国民の生命を守ったと自画自賛した以上、今さら欧米に「ワクチンをくれ」などとは言えない。

だからこそ、習近平指導部は、日本や欧米諸国などが複数回のワクチン接種によって集団免疫をつけようとしているのとは対照的に、あえて対策をとらず、自然感染によって同じ効果を狙っているのではないだろうか。だとすれば、中国の国民は気の毒と言うしかない。

2021年2月、中国・上海の南京路を歩く人々
写真=iStock.com/Robert Way
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“異例の3期目”で注目すべき人事

2022年10月の共産党大会で異例の3期目に突入した習近平総書記。彼にとっては、どんな手を使ってでも早期にコロナを抑え、国内経済を再生させることが最優先課題になる。それが国民の反発を和らげ、権力基盤を盤石なものにする特効薬になるからだ。

ただこれだけでは、マイナスをゼロに戻すだけのことだ。自身が目指す「中華民族の偉大なる復興」、すなわち台湾統一は実現しない。

そこで注目すべきは、外相だった王毅を共産党中央外事工作委員会弁公室主任に据えた人事である。

共産党が全ての上に立つ中国では、この主任ポストが外相より格上になる。つまりこの人事は、習近平総書記に忠誠を尽くし、「戦狼外交」と呼ばれる強気の外交を続けてきた王毅が中国外交のトップとなったことを意味している。

さらに注目は、香港行政長官として、2019年の香港の民主化デモを鎮圧した李家超を起用した点だ。李家超はこのときから習近平総書記の信頼を得て、側近の1人になったとされる人物である。