対地攻撃目標識別能力がないのにどう運用するのか

さらに言えば、12式はもともと地対艦ミサイルだが、地対地ミサイルとしても活用するという。今の自衛隊には対地攻撃の目標を識別する能力はない。今まではその能力の保有が許されなかったのだから当然である。海面から突き出す形になる水上艦を識別する能力と、複雑な地形や建物群の中に配置された地上目標を識別する能力は全くの別物だ。

こうした能力の開発はこれからなのか、どれぐらいの費用がかかるのか、そういう説明がないまま「12式を延伸して1000発以上を保有」という結論だけが出てくるのは異常事態だし、何よりも国民に対して無責任である。

織田信長の桶狭間の戦いは、今川義元率いる軍勢が休憩している場所を嗅ぎ付け、一気呵成かせいに奇襲を仕掛けたからこそ成功した。2万5000の大軍を率いた今川義元の本陣に2000人で突入した兵士は立派だ。英雄である。

しかし、勝敗を決めたのは織田信長の決心であり、そのときの情報力である。標的を探し出す能力や指揮統制能力も用意せずに12式の射程だけを延伸するのであれば、織田信長が少ない軍勢を率いて目的もなくウロウロしているようなものなのだ。

迎撃テストの目標となる極超音速ミサイルは日本にない

ミサイルをめぐっては、極超音速ミサイルを迎撃するミサイルとして、これまた国産の03式中距離地対空誘導弾を改善して使うという話もある。であれば、極超音速ミサイルを迎撃する能力を開発するためには、極超音速ミサイルを撃ち落とすテストを行わなければならない。

ミサイル
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しかし、どこに迎撃テストの目標となる極超音速ミサイルがあるというのか。そんなものは今の日本にはない。仮に極超音速ミサイルを輸入等により確保できたとして、どこの試験場で撃つのか。周辺住民や漁民に被害を及ぼさないような広いスペースを取れる発射区域がどこにあるというのか。

また、日本が長射程の対空ミサイルを持つとなれば、敵は妨害電波を発してダメージを避けようとするであろう。しかし、敵がどのような妨害電波を発するのか、日本には十分なデータがそろっていない。敵の電波情報を持たないということが自衛隊のアキレス腱であるというのが世界の専門家の認識である。