長距離ミサイルは必要だが、なぜ12式なのか根拠が見えない

私も長射程のミサイルは必要だと思う。中国は地上発射型の中距離ミサイルだけで1250発を保有しているとされる。沖縄から台湾、フィリピンを結ぶ第1列島線の内部で米軍が自由に行動できないようにし、さらには本土から来援する米軍が近づけないようにするA2/AD(接近阻止・領域拒否)能力は日に日に高まっている。これに対抗するためには、日本もアメリカと共に中距離ミサイルの数である程度は対抗しなければならない。

だが、なぜそれが12式なのかという話になると、根拠が見えてこない。さらには、12式の射程を1000キロまで延ばすこと自体に無理があるのではないだろうか。

12式は、いわゆる巡航ミサイルの一種だ。巡航ミサイルとは飛行機のようなものだ。翼と推進力を持ち、低い高度で長距離を飛行し、最終段階で複雑な軌道を描き、目標に対して精密誘導できる。翼の揚力を利用して長射程を飛行する点が、ロケットの推進力のみに依存する弾道ミサイルとの最大の違いである。弾道ミサイルと異なり低速で飛ぶことが基本である。このため相手のレーダーにも発見され難く、撃ち落とされにくい。

このままでは世界一簡単に撃ち落とされるミサイルになる

ところが、報道情報を読みこんでみたかぎり、12式の射程を1000キロに延伸する場合、空気抵抗の少ないかなりの高高度を飛ぶことになりそうなのだ。更に専門家の間で心配されていることが、射程延長に応ずる大量の燃料を搭載するため機体寸法も全長、直径とも米軍現用のトマホークの2倍程度という、世界一大型の長距離ミサイルになりそうなことである。

これでは世界一簡単に撃ち落とされるミサイルとなってしまう。迎撃する側から見れば、鴨が葱を背負って来るようなものだ。導入する意味がない兵器となりかねない。ここでも、他のミサイルとの比較が求められるが、その実情がどうであったのか。疑問が残る。

また、防衛省は政府方針が決まっていないとして、一切の論議を避けているが一口に敵基地攻撃能力と言っても、ミサイルだけを持っていればいいというわけではない。目標がどこにいるのか探し出す能力がなければ意味がないのは言うまでもない。その上で指揮統制能力も必要だ。米軍とターゲティング(攻撃する目標の選定)を調整するネットワークはどうするのかという問題もある。