税金の使い道の正当性を説明しなければならない
ここで、防衛装備については、一般家庭などで使われる電化製品などに比べて、はるかに無駄遣いが発生しやすい環境にあることを指摘しておこう。たとえば通常の家電などであれば、不備があれば、今の時代、すぐに公になり、メーカーも対策を急ぐものだ。ところが、防衛装備の場合は不具合がなかなか公表されない。というか公表に時間がかかるからだ。
たとえ不具合が見つかったとしても、防衛装備の場合、原因を特定し、検証して、再発防止に努めるための作業は極めて複雑で膨大であるため、一般に公表することが後回しになりやすい。また、装備の不具合がある状態は、敵国にとっては好機になるため、公表しないことも珍しくない。そうした諸々の事情があり、普段から情報公開が行き届きにくいため、稀、かつ残念ではあるが、不具合を意図的に秘匿することもある。
しかし、国民の税金を使って装備を導入する以上、その使途については、その性格上公表になじまないものがあることも考慮した上での節度を持った透明性が求められる。防衛省や自衛隊は税金の使い道の正当性を説明しなければならない。
「国産の12式中距離地対艦誘導弾」への不可解な固執
その観点からすると、どうしても解せないのが、国産の12式中距離地対艦誘導弾の長射程化をめぐる防衛省の判断だ。報道では12式の射程を約1000キロに延ばし、敵基地攻撃と遠距離対艦攻撃という両方の目的で保有するという。保有数は「1000発」だとか「1500発以上」だとか、まるでバナナの叩き売りのようになっている。
だが、現状は、行うべき説明をすっ飛ばして結論だけが先行している感が否めない。本来であれば、日本を守るためにこういう作戦をするから、これだけの数が必要だ、というシミュレーションが前提となっていなければおかしいが、そういう話は聞こえてこない。
もちろん、国防上の「秘密」に当たることをいう必要はないが、しかし、ほかの候補との性能比較、費用対効果や後方支援体制などの考え方は、ざっくりとしたところで国民に説明されるべきである。さらに、12式改善型の開発リスクと、その対応策についても全く語られていない。
最初から「12式改善ありき」という手法は国民に対する背信行為ではないだろうか。他の候補との比較等の説明がないため、国民は防衛省案が税金の最適用法だという判断さえできないのである。