妻や子どもをもちながら性犯罪に走る男性も

プログラムは夜7時から始まったからか、一度帰宅し、私服に着替えて参加したと思われる男性と、仕事帰りらしくネクタイにスーツを着用したままという男性とが半々だった。私が座った隅の席から確認できた範囲では、左手の薬指に結婚指輪をしていた男性は4人だ。つまりは、妻や子どもを持ちながら性犯罪を犯す男たちがいるということだ。

大石クリニック 院長 大石雅之さん(筆者撮影)
大石クリニック 院長 大石雅之さん(筆者撮影)

大石クリニックの再犯防止プログラムでは、早稲田大学人間統計学部大学院・臨床心理学研究室と共同で作成した独自のテキストが使われていた。テキストは全12セッションで構成され、それぞれがいくつかのステップに分けられている。

たとえば、第1セッションは「二度と繰り返したくない?」というテーマで、

ステップ1「なぜ問題行動をやめるのか」、
ステップ2「あなたの大切にしているものは」、
ステップ3「願いがかなうなら」、
ステップ4「問題行動をやめた先にあるもの」……、

といった感じの設問が続く。第3セッションでは「性的問題行動を起こした状況」について、時間や場所、そのときに抱いていた感情、思考、できごと(なぜ問題行動に至ったか)等々の細かい設問もある。

電車が混んでいればバレないと……

プログラムの参加者は自分自身に問いかけるかのように、それぞれが思うことをテキストに書き込み、発言していく。見学は許されたが、私は彼らとの接触を禁じられていたので、参加者がどのような問題行動を起こしたのかは、彼らの発言から推測するしかなかった。参加者の一人が言う。

「満員電車で痴漢をしたり、女の人のあとをけたりしました。問題行動を起こしているときは、自分を満たしたいという気持ちに支配されていた。電車が混んでいればバレないと思ったし、何をやっても許してもらえるような気がしていた。自分は他の人ができないことをやっているという優越感もありました」

別の参加者も打ち明ける。

「携帯をぶつけたり落としてしまった拍子にカメラ機能が壊れてしまいました。問題行動を起こそうと思ってもできないので、結果的によかったのかと……、そのうち携帯は買い替えると思うんですが、そのときにどうなるかちょっと心配しています。問題行動を起こしていたときは被写体をいつも目で追っていたし、録った動画を何度も繰り返して見られることに高揚感がありました」