「お金のにおいを嗅ぎつけた人たちが寄ってくるんです」
妹さんから、この話を聞いた時、Kさんは「無理に時間をつくってでも相談に乗っておくべきだったと思った」と言います。
「成年後見人をつけるかどうかは重要な判断ですから、すぐに決まるものではありませんし、仮に決まったとしても手続きに時間がかかるため、今回のような2つの出来事が起こった時点で成年後見人になってはいないでしょう。ただ、後見人の候補者として交流ができることでアドバイスはできるわけです。息子さんが亡くなった時も連絡は来るでしょうから、葬儀の相談にも乗れる。クルマの売却についても『いくら親しくても素人がそんな話を持ちかけてくるのはおかしいから応じない方がいいですよ』と。私のように成年後見人として高齢者や認知症の方と接していると、こうした類いの話は残念ながら、日常的に数多く聞きます。葬儀社の件は、業者側からすれば“営業の範囲内”でしょうし、2人組の女友達にしても売却代金50万円は支払われていますから悪い人とは決めつけるわけにはいきませんが、資産を持っていそうな高齢者には、お金のにおいを嗅ぎつけた人たちが寄ってくるものなんです」
心に寂しさを抱えた高齢者は少なくありません。それに認知症が加わり判断能力が鈍ると、普通ならおかしいと思うことも信じてしまうものです。振り込め詐欺を行う犯罪集団だけでなく、違法ではないものの、グレーなやり方で利を得ようとする人たちもいるということ。そうした高齢者が家族の目の届かない状況にあるのであれば、Kさんのような経験豊富で面倒見の良い成年後見人をつける検討をしてみてもいいかもしれません。