親の役割は「脳を守り、必要な栄養を供給すること」
思春期は変化の行程です。そばに信頼できる確固とした親の存在があることが、切り札となります。確固としたということは、妥協しないという意味ではありません。確かに私たち親は、まるでエイリアンに変態した子どもを前にとまどうこともよくあるでしょう。わが子は以前と同じようには反応しませんから。私たちは動揺すると、ついわが子をコントロールしようとします。
それに対して、子どもは反抗で応じるしかありません。そうなると親子の関係が打撃を受けかねない上、子どもの将来の能力も危険にさらされるのです。
思春期は脳が非常に傷つきやすい時期です。一連のホルモンとニューロンの再編成のせいで、きわめて敏感な時期であり、発展への窓、つまり学習という観点では大きな可能性を持つ時期でもあります。この時期の子どもは向こう見ずで、反抗的に見えるでしょう。ですが、「何でも知ってる! 大丈夫」という外面の下で、まだ非常に脆くて繊細です。私たち親の仕事は、この発展途上の脳を守り、支え、必要な栄養を供給してあげること。
これが思春期に親が受け入れるべき現実です。子どもの行為に影響力を持つのは、私たちより子ども本人なのです。私たち親には子どもの人生を左右する力がない──そう認めることが、私たち親に「本当の力」を取り戻させてくれるでしょう。なぜなら私たちはわが子に対して、非常に大きい力を、何よりも大きい愛の力を持っているからです。
イメージは「航空母艦」
愛着研究のスペシャリストである児童精神医学者ニコル・ゲドネによれば、子どもにとって愛着の対象とは、航空母艦のようなものです。危険があった場合、真っ先に頼る相手を「主要な愛着の対象」と言います。思春期には愛着の新しい方向づけが始まっていますが、まだ親が主要な愛着の対象です。
飛行機は燃料補給のために、航空母艦に戻ってきますね。航空母艦が信頼できるものであるほど、滑走路は見晴らしが利き、燃料は上質で、飛行機は自分の力でより遠くまで飛んで行けるのです。
航空母艦(親)と飛行機(子)のイメージを持つことは、この時期の関係性を理解する上で非常に役立ちます。
親の役割は最高の燃料を供給し、時々修理を施し、そして……必要な時に子どもが休息しに帰ってこられるよう、そこにい続けること。
航空母艦から高度、大気圧、気象などの有益な情報を知らせれば、飛行機はそれを考慮に入れるでしょう。けれど、あまりうるさく制御しようとすれば、何も聞かなくなります。大空で自由に宙返りをし、テスト飛行をすることのほうがずっと重要なのですから。