12~13歳の子どもはリスクテイカー

アメリカのメリーランド大学で行われた実験をご紹介しましょう。スクリーン上に1つの風船が現れます。クリックするたびにそれをふくらませてコインを1枚獲得しますが、もし風船が割れたら、得たものをすべて失います。

イギリスのケンブリッジ大学の研究によると、12、13歳の子どもはこのテストで、8歳の時よりうまくいかないそうです!

彼の脳の中で、側坐核そくざかく(脳の深部にある神経核で、快感や報酬を求める行動や意欲の向上に重要な役割を果たすと考えられている。喜びと報酬の回路と言われる)と腹側被蓋野ふくそくひがいや(VTA)の組織が喜びを予測して脳内に、大人やもっと小さい子より大量のドーパミンを分泌します。

そのため強い感情を追求し、目の前の利益に賭けたくなるのです。12、13歳の子どもの知的・論理的能力は最高レベルなのですが、その能力がうまく発揮されるにはあまりに誘惑が強いのです(※)

※「意思決定とアイオワ州ギャンブルタスクについて」ノースカロライナ大学の論文より

子どもを全面的に信頼しよう

私たち親は思春期の子どもを信頼できるでしょうか? もちろん、信頼できますとも!

確かに、子どもは規則を破るでしょう。反応も予測がつきます。友だちにそそのかされたり、グループに巻き込まれたりして、うっかり、あるいは単におもしろそうだと思っただけで、やってしまうでしょう。

危険だからやめるという選択肢はありませんし、禁止されているからやめておくという選択肢はもっとありません。反対に、禁止すると、側坐核が刺激され、危険をさらに忘れてしまいます。

親と話している時のティーンエージャーは成熟し、考え深く、自分をコントロールできているように見えるかもしれません。確かにそうなのですが……。しかし仲間と一緒にいる時、感情に強い負荷がかかった状況にある時、睡眠不足やストレスの影響を受けている時は違います。衝動を抑制する脳の働きが停止してしまうのです。もちろん完全に停止するわけではありませんが、その能力は興奮や仲間の影響に簡単に負けてしまいます。

アドバイス
こちらが信頼しさえすれば、うまくいくという幻想は捨てましょう。例えば「お酒は飲まないと、あなたを信じているからね」と言うことは、「お酒は飲まないと約束しなさい!」と約束を無理強いするのと同じで、無駄なだけでなく逆効果を生みます。グループの圧力に抵抗するのに必要な能力を発達させることなく、親の信頼を裏切らなければならない状況にわが子を追い込まないようにしましょう。
「思春期の子どもを信頼する」とは、親の期待にそって振る舞うよう信頼するということではなく、もっと全面的な信頼を意味しています。子どもは道に迷い、失敗し、いろいろな問題にぶつかるでしょう……そうやって人生を生き抜いていく力を養っていくのです。その力を信じてあげましょう。