ロッキード社の兵器が大活躍
ウクライナ戦線で大活躍した携行型対戦車ミサイル「ジャベリン」は、ロッキード、レイセオン両社が共同で開発、生産した。ウクライナ人が「聖ジャベリン」と呼ぶ救世主で、これまでにロシア軍戦車1000両以上、装甲車2000両以上を破壊し、命中率は94%とされる。ロッキード社はジャベリンの年間生産量を従来の2000発から4000発以上に倍増することを決めた。
戦場でもう一つのゲームチェンジャーとなった射程80kmの高軌道ロケット砲システム「ハイマース」は、ロッキード社が開発・製造し、4月から供与を開始。侵攻したロシア軍に大打撃を与えた。
ロッキードは国防総省との間で、新たに6000万ドルを投じてハイマースの増産計画をまとめた。ロッキードは同じ発射装置から撃てる射程300kmの戦術ミサイル「ATACMS」の売り込みも図る。
軍需産業の政治献金が政策に影響か
業界3位のボーイング社の株価は冴えないが、ロイター通信が11月末、「米国防総省は射程150キロの地上発射精密ロケットシステム、GLSDBをウクライナに提供するというボーイング社の提案を検討中」とロイターが11月に報道すると、株価は上昇した。
同システムは、ボーイングがスウェーデンの防衛大手サーブと共同生産し、精度はハイマースを上回るという。射程150kmなら、ウクライナに侵攻したロシア軍の後方軍事目標を攻撃でき、来春からウクライナ軍への提供が始まる見通し。
軍需企業は予算編成権限を持つ議会の防衛族を通じて新型兵器の売り込みを図っている。ベトナム戦争時もそうだったが、議員は資金豊富な軍需産業の政治献金に弱いのだ。
米政府がウクライナに停戦を強く求めず、ロシアとの対話にも消極的な背景に、軍需産業の思惑が透けて見える。
ウクライナは「兵器の実験場」になっている
ウクライナ戦線には、新型地対空ミサイル・スティンガー(レイセオン)、自爆用無人機スイッチブレード(エアロバイロンメント)、ドローンを撃ち落とすIRSロケット、バンパイア(L3ハリス)などの米国製新型兵器も投入されつつある。
欧米メディアによれば、NATO(北大西洋条約機構)加盟諸国の特殊部隊や情報工作員とともに、西側軍需企業のスタッフもウクライナ入りし、現地で兵器の能力などをチェックしている。ウクライナは新型兵器の貴重なショーケースとなった。
「兵器のスペック上の性能は分かっていても、実際に戦場でどの程度使えるかは実戦で判断するしかない。ウクライナ戦争は兵器の能力、効果を知る貴重な実験場になった」(西側軍事筋)。欧米兵器の「人体実験」にさらされるロシア軍兵士はたまったものではない。