思い込みと妄想で残業が増える
クロスリバーでは、800社超で作成された約5万ファイルのパワポ資料とその使われ方を調査しました。すると24%のページが上司や顧客に対する過剰な気遣いで作成されていたことが判明しました。いわゆる「忖度ページ」です。
「忖度ページ」を追跡したところ、約8割が使用されていませんでした。作成者と受け取り側の認識ギャップによって「差し戻し」が増え、“残業沼”へとつながることも判明しました。
作成している当人にとっては、「この情報があれば怒られないだろう」とか、「こんな質問があるかもしれないから資料に入れておいたほうがいいだろう」とか、「PowerPointで綺麗な資料を作成できることをアピールしたほうがいいだろう」などと、いろいろな思惑に基づき、「よかれ」と思って資料を作るのです。
しかし、その「忖度」は、はっきり言って「妄想」の類でしかありません。
妄想のまま資料を作ってしまうので、頑張っているのに成果が出ないのです。重要“そうな”内容、必要“そうな”内容と、「そうな」を全部カバーしようとしたら、「忖度ページ」が増えるばかりで時間が足らなくなり、やはり残業沼にハマるだけです。
ジョブ型雇用は若手社員に不利
2019年の労働基準法の改正、いわゆる働き方改革関連法の施行によって、残業抑制プレッシャーが年々高まっています。かつては、努力や徹夜などのプロセスを評価されていた時代もありました。しかし、今は成果主義が浸透し、欧米型のジョブ型雇用を採用する企業も増加しています。
しかし、ジョブ型雇用は若手社員に不利です。
少子高齢化は加速し、人手不足は深刻な状態になります。短期的な業績を追いかける企業にとっては、時間をかけて社員を教育するのではなく、即戦力人材を社外から引き抜いたり、プロ人材を業務委託として採用したりする傾向が顕著になります。
若手社員にとっては、教育機会が減っていくのにアウトプットを評価されることになります。これまで時間とお金をかけて育成されてきた30代・40代の先輩たちと同じ基準で評価されるのです。
さらに、ジョブ型雇用で職責が明確になることで、職場の先輩が助けてくれなくなるでしょう。成果に対する評価がエスカレートして、先輩がライバルになることもありえます。