地上波ドラマのアナログな楽しみ方

――日本のエンタメがかつてより力を失ったと言われることもありますが。

【生方】単純に、YouTubeもネトフリもインスタもなかった時代と比べると、エンタメが多様化したぶんみんながドラマや映画に割く時間が減っただけ、とも言えると思います。もちろんその多様化したなかでドラマや映画の存在感を回復させなくてはならないのだと思いますが……。

――テレビドラマの脚本家として、配信コンテンツなどに危機意識を感じることはありませんか?

【生方】テレビドラマの面白さって、配信で全話一気に見るのではなく、毎週同じ時間にみんなでチャンネルを合わせ、SNSや学校・職場で感想を言い合いながら次回まで一週間待たなきゃいけないところにあると思うんです。

今となってはアナログに感じるその特殊性こそが、地上波の連続ドラマの楽しみ方なので、この形式を続ける限りは「一週間が待ち遠しい」と思ってもらえるような内容にするしかないんじゃないかと思っています。

最終回で紬と想はどうなる?

――最後になりますが、紬と想の関係だけでなく、登場人物全員の行く末を視聴者が固唾かたずをのんで見守っていると思います。果たして最終回はどうなるのか、見どころを教えていただけますか?

【生方】「登場人物みんなに幸せになってほしい」という感想をたくさんいただいて、とてもうれしく思っています。ただ、ドラマでも現実でもそうですが、幸せかどうかは本人が決めることです。みんなが幸せになったかどうかを判断するのではなく、それぞれの幸せがどんな形だったのかを見届ける気持ちで見ていただけたら幸いです。

『silent』脚本家の生方美久氏。
撮影=齋藤葵
『silent』脚本家の生方美久氏。
(聞き手・構成=福田フクスケ)
【関連記事】
【前編】29歳の『silent』脚本家が「世界トレンド1位の涙腺崩壊ドラマ」を書くためにやった禁断の手法
3位は安達祐実、2位は宮澤エマ、1位は…令和版「コメディエンヌランキング」ベスト10
同じ作品なのになぜ…セーラームーンが「原作マンガ」と「テレビアニメ」で絵柄がまったく違う理由
大河ドラマでは絶対に描けない…徳川幕府に書き換えられてしまった「関ヶ原の戦い」の真相
「床上手」とはどういう意味か…江戸時代の遊廓で女性たちが体現していた「色好み」