トーナメントで生まれた弊害
しかし「一戦必勝」のトーナメントと言うシステムは、多くの弊害を生み続けた。
まず「絶対に負けられない」ために、チームは全試合「ベストメンバー」で試合をすることを強いられる。常にエースがマウンドに上がり、腕も折れよと全力投球する。
トーナメントを勝ち上がると最後は連投になる。甲子園に出たエースの中には、過去の記事でも紹介した沖縄水産の大野倫など肩肘を損傷して投手を断念する選手が続出した。
また、投手以外のレギュラーも固定されるため、控えはほとんど出場機会が与えられない。強豪校には、3年間一度も公式戦にでたことのない「選手」がたくさんいる。「一将功なりて万骨枯る」という状態になってしまうのだ。
さらにトーナメントでは「勝利以外は無価値」になるため極端な「勝利至上主義」がまかり通る。失敗した選手を叱責し、時には暴力を振るう指導者、相手選手の失策を笑い、ヤジり倒す選手。サイン盗みなど不正をしてでも勝とうとするチームが存在した。
これまで高校野球とは「そういうもの」だった。しかし、近年、「怖くて楽しくない」野球は敬遠されるようになった。
ここ10年で高校野球部の競技人口は約半分に
中体連の調査によると2012年時点では、男子中学生の運動部活の競技人口は軟式野球部が26万1527人で第1位、サッカー部が、24万8980人で2位だったが、2021年にはサッカー部が16万7256人で1位、バスケットボール部が16万4005人で2位、野球部は14万9485人で3位。14万6937人で4位の卓球部に抜かれようとしている。
少子化によって各競技の人口は増えてはいない。この10年で高校生世代の人口は89%に減ったが、野球部の競技人口は57.5%とそれを大きく上回る勢いで減少している。
スポーツの選択肢が増えたことが大きいが、若者世代では野球は「人気スポーツ」の座から滑り落ちようとしている。
指導者は現場で「選手が減っている」ことをひしひしと感じている。Liga Agresivaのような取り組みは、まさにこうした危機感から生まれたと言ってよい。