ロンドンでサッカーを見ていると、市民もメディアもとにかく「上から目線」でモノを語る。その根拠は、英国がサッカー発祥国だという理由もさることながら、イングランドのプロサッカー1部リーグである「プレミアリーグ」が世界最高峰だという自負があるからだろう。放送権料などによる収入は圧倒的で、「欧州5大リーグ」の中で最高の売上高を誇っている。

そんな英国では、国対抗でしのぎを削るW杯においても、「プレミアリーグにどれだけ貢献度があるか」で選手のレベルが測られる習慣がある。記事を読めば、各国選手名の頭には必ずプレミアのチーム名が付され、テレビやラジオの実況の際もくどいほどに所属チーム名が連呼されるほどだ。ちなみに、日本の主将・DF吉田麻也選手について、現在は独ブンデスリーガのシャルケに所属するにもかかわらず、「長年サウサンプトンでプレーしたベテラン」と評されることが一般的だ。

「アンダードッグ」から一気に「優勝候補」へ

そんなサッカーに手厳しい英国で、日本の評価が一転したのは11月23日のドイツ戦だ。それまで日本は、W杯の本戦で優勝国のどこにも勝ったことがなく、1998年フランス大会の出場以来、「グループリーグで最下位」または「16強に手が届くもそこで敗戦」のどちらか、という実績しかなかった。

欧州では“死の組”E組に入った日本について「到底勝ち目のないチーム」を意味する「アンダードッグ」との評価しかなく、つまり決勝トーナメントに参加するまでの実力はない、というのが大方の予想だった。

ところが、手も足も出ないと考えられていたドイツに完勝。英国メディアがこぞって「アンダードッグ転じて優勝候補に名を連ねるジャパン」と、手の平返しで大喝采する騒ぎとなった。

日本代表チームの快進撃といえば、スポーツは違えど2015年のラグビーW杯で南アフリカをラストワンプレーで逆転して勝利した記憶が英国人には強く印象付けられている。ドイツに勝った直後、ロンドンの街に出てみたら、誰からともなく「おめでとう」「勝ったね」と声がかかり、自分がプレーしていたわけでもないのに誇らしくなる。南アに勝った時も多くの人々から褒められる経験をしたが、こうした「お声がけ」は何度でも歓迎だ。