コスタリカを圧倒しなければ一流国になれない
鮮烈な勝利ののち、英国サッカー界の次の関心事は「日本は強豪国の仲間入りをすることができるか?」という期待だった。
11月27日に行われたコスタリカ戦の開始前、元イングランド代表MFジョー・コール氏はこう指摘していた。「ドイツに勝った日本が本格的な強豪国に名を連ねるなら、コスタリカを大量点で負かさねばならない」
つまり、日本はさっさと2勝し、16強に名乗りを上げ、次のスペイン戦を気楽に戦うというシナリオだ。これなら体力を温存し、決勝トーナメントにより集中できる。「あくまで本気を出すのは決勝トーナメントに行ってから」という、イングランド元代表らしい発言だ。
しかし結果は敗戦。ここで「強豪国入り」を期待した英国サッカー解説陣やメディアは、「ドイツ戦の勝利は奇跡だったか」とでもいうような明らかに失望する論調が目立った。日本サポーターのスタンドのゴミ拾いとロッカールームの清掃は英国でも広く知られているが、肝心のプレーで魅せることができないまま予選リーグ敗退という見立てが強まっていた。
その後、英国が再び大盛り上がりした瞬間は、12月1日に行われたスペイン戦のあるシーンだった。
VAR判定を「因縁のドイツ戦」と重ねていた
日本がスペインと戦っている最中、E組のドイツとコスタリカも試合をしており、4チームが数分ごとに順位が入れ替わった状況は英国でも大きな話題になった。過去最大級の激戦に、W杯の公式アカウントも「グループEさん、君のことは永久に忘れない」と、運営側からみても異例のシーソーゲームだったことを物語っている。
中でも英国メディアが注目したのは、日本×スペイン戦の後半6分にMF田中碧選手が決めた決勝ゴールだ。
伏線となったのは直前、わずか2ミリほどだけ線上に残ったボールを、MF三笘薫選手が拾ってアシストする格好になったあのプレーだ。VAR判定でインを勝ち取り、世紀の大逆転となったわけだが、サッカーの元祖を自認するイングランドでは「デジタルの目で見た結果だからインはイン」「見た目ではボールが外に出ているのだから、あんなものが許されるならVARなど潰してしまえ」など両極端な意見が続出。自国の試合でもないのに国を二分するかのような大騒ぎとなった。
もう一つ、英国市民を大いに喜ばせたのは、この決勝点がドイツをグループ敗退へと送り込むとどめになったことだ。これはW杯でVARが導入される“直接原因”ともいえる出来事が2010年南アフリカ大会での、決勝トーナメント初戦のイングランド対ドイツ戦で起きた“事件”による。