全国には約5000の高校があるが、そのうち東京大学の合格者を輩出している学校は限られる。 物理学の研究者を経て外資系金融機関に勤務し、現在は作家の藤沢数希さんは「毎年3000人が東大に合格しているが、昨年の場合、1570人は36校の『名門高校』の出身者だった。つまり東大生の半分以上は、全国の高校の0.7%という限られた高校から進学している」という――。
※本稿は、藤沢数希『コスパで考える学歴攻略法』(新潮新書)の一部を再編集したものです。
日本の受験産業は上手く機能している
日本の(偏差値の高い)高校が難関大学の合格者数を競い合う仕組みは、ポジティブフィードバックが発生するシステムである。東大などの難関大学の合格者数が増える→人気化して入試難易度が上がる→偏差値の高い生徒が入学する→ますます難関大学の合格者数が増える、という好循環が起こる。
難関大学合格者数が減れば、当然その逆も起こり、一気に名門校から転落することもあるのだ。だから、高校の先生たちはみな必死なのである。東大合格者数が減ると危機感を持って、必死にがんばるのだ。
このように、日本の高校、とりわけ進学校はものすごく競争しており、ある意味でPDCAサイクルが非常によく回っているのだ。だから、高校までの教育は、単に難関大学にたくさん合格させるという、見方によっては貧しいとも言える目標設定ではあるのだが、結果として高校間に競争原理がよく働き、規律が生まれ、高い教育レベルが保たれている。
こうした大学受験の実績という、ある意味でごまかしの利かない数量目標があるおかげで、日本の進学校と予備校からなる受験産業、あるいはもっと広く教育産業全体は上手く機能しているのだ。
身も蓋もないことを言えば、いい大学に入るには、高校受験組はなるべく偏差値の高い高校に入ることであり、中学受験組はなるべく偏差値の高い中高一貫校に入ることなのだ。