「謙譲語」が使いこなせると印象が変わる

いくつか例を挙げてみましょう。

言う:尊敬語「おっしゃる」謙譲語「申す、申し上げる」
聞く:尊敬語「お聞きになる」謙譲語「うかがう、お聞きする」

敬語は目上の相手に対して使うことが多いことから、まずは尊敬語を学ぶ人が大半です。丁寧語、尊敬語を正しく使えることで、ある程度は礼儀正しい印象を与えることができます。「○○さんが言っていたように」ではなく、「○○さんがおっしゃっていたように」と言うほうが印象は上がります。「A社の件、知っていますか?」ではなく、「A社の件についてご存じですか?」と相手に尋ねたほうが丁寧な印象になりますよね。

さらなる上を目指すのであれば、ぜひ「謙譲語」をマスターしましょう。謙譲語は自分に対して使うので、必要性をあまり感じていない人もいます。だからこそ、謙譲語を使いこなしているだけで、印象に差をつけることができます。

「それ聞きました」と言うよりも、「そちらの件うかがいました」と言えたほうが、“きちんと感”がありますよね。日頃から、自分の行動に対しては、自分自身をへりくだり、相手を高める表現を練習しておくと自然と出てくるようになります。ちょっとした表現の違いで「あ、この人はちゃんとしているな」と相手に感じてもらえることが伝わりましたでしょうか。日頃から使っている言葉を少しかしこまった表現に変えることからはじめてみましょう。ほんの小さな一工夫でガラリと印象が変わりますよ。

・POINT
自分に対して使う言葉で、印象に差をつけられる

敬語を使う「2つの理由」

あなたは敬語を使う理由について考えたことがありますか?

わざわざ考える機会は、あまりないかもしれませんね。しかし、敬語を正しく使える人とそうでない人の違いは、実はここにも表れるのです。文化庁の発表している『敬語の指針』に、敬語を使う2つの理由が書かれているのをご存じでしょうか?

会議で話を聞きながらメモを取る人
写真=iStock.com/kazuma seki
※写真はイメージです

1つめは「相互尊重」という考え方。「敬語は、人と人との『相互尊重』の気持ちを基盤とすべきものである」と書かれています。年齢や立場に関係なく、目の前にいる相手のことを尊重し、失礼のないように敬語を使いましょう、という意味です。ある程度、敬語を使えている人であればこの視点はしっくりくるのではないでしょうか。目上や年上はもちろんのこと、初対面の相手など相手に失礼のないようにまずは敬語を使いますよね。

2つめは「自己表現」という考え方です。「敬語は、自らの気持ちに即して主体的に言葉遣いを選ぶ『自己表現』として使用するものである」とあります。正しく敬語が使えることはあなたにとって武器となり、自信にも繋がります。