むしろ「言葉づかい」は崩してはいけない

親しみやすさは大切にしていますが、決して馴れ馴れしくならないように気をつけています。その代わりに顔の表情や感情を込めた話し方、身振り手振りといったジェスチャーなど、言葉づかい以外の部分を崩すことはあります。「かしこまりました」と真顔で低めのトーンで抑揚をつけずに言うと、文字通りかしこまった印象を与え、相手に距離を感じさせてしまうかもしれません。

オフィスで楽しそうにミーティングをする人たち
写真=iStock.com/maroke
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それに対して、満面の笑みで目を合わせ、明るく高めのトーンで「はい、かしこまりました!」と言えば、親しみやすさは十分に伝わるのです。他にも「○○さん!」「○○さんは……」と相手の名前を繰り返し呼んだり、「以前、餃子がお好きとおっしゃっていましたよね! ○○さんをお連れしたいお店があるので、ぜひご一緒しませんか?」など以前の何気ない会話を覚えているなど、さまざまな工夫をすることで相手と適切に距離を縮めています。

言葉を崩さずに相手との距離を縮めるには、日頃から少しずつ表情や話し方のトレーニングをしておく必要があります。ぜひ言葉を「崩している」人から「崩さない」人を目指していきましょう。崩しても良いのは言葉づかい以外です。覚えておいてくださいね。

・POINT
言葉以外の部分を崩すことで距離を縮める

「尊敬語」と「謙譲語」のたった一つの違い

私は若い時から多くの人と接する中で、「親しみやすいけれど礼儀正しい」という一流の印象を持つ人を徹底的に研究してきました。同業者である講師や著者の先生、ホットヨガスタジオのインストラクター、お気に入りブランドの店員さんなど、分析をした結果わかったことがあります。ここでもやはり「敬語」「言葉づかい」にヒントがあったのです。

突然ですが、あなたは敬語の種類を覚えていますか? 敬語には大きく分けて「丁寧語」「尊敬語」「謙譲語」の3種類があります(正式には丁重語、美化語が加わり5種類となりましたが、ここではいったん3種類のまま話を進めます)。敬語と聞くと、基本的には丁寧語を使うイメージが浮かぶのではないでしょうか。

「~です」「~ます」「~でございます」と表現することで、丁寧な印象を与えられます。丁寧語が難しいと悩む人はあまりいませんよね。問題は「尊敬語」と「謙譲語」です。この2つの違いがわかりにくく、「使い分けるのが難しい」と言う人が多くいます。

「尊敬語」と「謙譲語」の違いは、実は一つだけです。「相手」が主語であれば「尊敬語」を使います。主語が「自分」や「身内」であれば「謙譲語」を使います。尊敬語を考える時は、主語に「お客様が」とつけると言葉が出てきます。同様に謙譲語を考える時には、主語に「わたくしが」とつけると答えが出てくるはずです。