習近平政権の「ゼロコロナ」政策に対する市民の抗議行動が中国全域、そして世界に広がっている。政治ジャーナリストの清水克彦さんは「今回の抗議行動にはリーダーが存在せず、要求も現時点ではロックダウン解除などにとどまっている。警戒態勢と検閲の強化によって、天安門事件のような事態に陥る前に、抗議行動は収束させられるのではないか」という――。
「私たちには自由がない」と世界に伝えたい
「習近平、辞めろ!」「中国共産党なんか要らない!」
11月30日夜の東京・新宿駅周辺。在日中国人たちが、白い紙や「不要封鎖、要自由」などと書かれたプラカード、それに台湾や香港の国旗などを掲げ、口々に、最高権力者、習近平総書記(以降、習近平と表記)への批判の声を上げていた。
参加者の多くは、新型コロナウイルス対策というだけでなく、中国当局に身元を特定されないよう帽子やマスクで顔を覆っていたが、留学生という若い女性は、筆者が映像取材をしないラジオ局の記者と分かると、すぐに帽子を取り質問に答えてくれた。
「私たちには自由がない。習近平には退陣してもらいたい。そのことを世界に伝えたい」
「無言のプラカード」を掲げる理由
1週間ほど前、11月26日から27日にかけて、中国の上海や首都・北京で発生した抗議行動は、わずか1~2日で南京や武漢、成都や広州、そして香港に拡がり、そのうねりは、東京やソウル、ニューヨークやシドニーなど世界十数都市にまで押し寄せている。
それだけ、習近平指導部が推し進めてきた「ゼロコロナ」政策への怒りは強く、習近平の強権政治に対する不満も大きいということ。
抗議行動の参加者が掲げる白い紙は、言論の自由がないことの象徴である。同時に、紙やプラカードに何も書かないことで、中国当局による検閲や逮捕の対象となることを免れるという狙いも込められている。一連の抗議行動が「白紙運動」と呼ばれるゆえんである。
前述した東京・新宿駅周辺での抗議行動では、文字が書かれた紙も散見されたが、白い紙を掲げての抗議行動は、1カ月余り前、総書記として3選を果たし「1強独裁路線」を固めつつつつある習近平にとって、対応を誤れば、「白紙運動」どころか、足元を揺るがす「白紙革命」へとつながる危険性をはらんでいると言っていい。