※本稿は、ポリー・ムーア『賢い子は1歳までの眠りで決まる』(日本文芸社)の一部を再編集したものです。
「昼寝が必要なのは頭が悪いから」という誤解
わたしの知っているある母親は、朝、9カ月の赤ちゃんと公園で遊んで、昼寝をさせに帰ろうとしたら、同じグループの母親に「うちの子なんて、もう何カ月も前から午前中はお昼寝をしなくなったわよ。頭がよくて好奇心が強いから、真っ昼間から横になって寝たりしないの」と誇らしげにいわれたそうです。
昼寝をする赤ちゃんの母親は「昼寝が必要なのは頭が悪いからだといわれたような気分になりました」と話してくれました。
ここに秘められたメッセージは明らかでしょう。睡眠なんて気にしているのは、おもしろみがなくてつまらない、時代遅れの人だけだということなのです。眠りをなおざりにする文化は、こうした赤ちゃんの眠りに対する態度にもあらわれています。
自分では十分睡眠をとるようにいつも心がけている人でも、赤ちゃんを起こしておかなければならないという社会的なプレッシャーをたくさん感じているかもしれません。
しかし、賢い子どもの親は睡眠を大切にしている人ばかりです。
昼寝で睡眠不足の穴埋めができるのは当たり前ではない
あなたは休み前や金曜日に好きなだけ夜ふかしをして、休みの日に昼まで寝ていたことや午後にたっぷり昼寝をしたことはありませんか。自分のことを振り返って思いだしてみてください。
このようなことができたのは、時間が自由に使えたからということもあるでしょう。しかし、一番にあげられる理由は、睡眠不足になってもすぐに回復できる体力があったからです。
大人の場合、十分休めなくても、あとからその分を補うように長時間眠れば穴埋めすることができます。これは回復睡眠といわれるもので、周波数の低い脳波がでて脳機能を回復する徐波睡眠と呼ばれる段階にあたり、とくに深い眠りを期待できます。
ところが赤ちゃんは、こうした眠りにつくことができません。それは脳がまだ十分に発達していないからです。
生後1年目の赤ちゃんは、視覚系や言語、情動スキルが発達中で、睡眠をコントロールするシステムもまだできあがっていません。つまり、赤ちゃんの脳は、眠る方法を「学習」し、睡眠のシステムをつくらなくてはならないのです。