※本稿は、ポリー・ムーア『賢い子は1歳までの眠りで決まる』(日本文芸社)の一部を再編集したものです。
子供の睡眠不足に気が付かない親たち
近年、わたしたちひとりひとりは赤ちゃんが眠るのはよいことだと思っているのに、わたしたちが暮らす文化のなかでは、赤ちゃんにたっぷり睡眠をとらせるのが難しくなっています。
子どもの睡眠障害は増えるばかりです。はじめて親になったたくさんの人々と接した経験からも、いつも睡眠不足の赤ちゃんが増えていることがわかっています。
わたしの講座の受講者から聞いた話のなかには、赤ちゃんが1日に12時間、さらには10時間しか寝ないという例や、抱っこされたまま泣きつづけ、ようやくうとうとしてきたと思ったら、あっという間に昼寝が終わってしまうという例もありました。
新生児は16時間以上眠らせるようにといわれていますから、10〜12時間ではかなり少ないといえるでしょう。
また、赤ちゃんがまぶたを母親の肩にこすりつけているというのに、疲れきった母親は「うちの子は全然眠くならないみたいなんです」といいながら、赤ちゃんの顔の前でカラフルなおもちゃを振っているのを目にしたこともあります。
こうした例からもわかるように、親の多くは、子どもが睡眠不足になっていることに気づいていないのです。
赤ちゃんのほとんどは13〜15時間眠る必要がある
2005年、アメリカ国立睡眠財団の委託により、4歳未満の子どもたちの睡眠習慣と行動について全国的な調査が行われました。
生まれてからの1年は、月齢によって赤ちゃんが必要とする睡眠時間に変化が見られますが、睡眠財団の小児科特別委員会は、新生児の段階をすぎた赤ちゃんのほとんどが24時間中13〜15時間眠る必要があるといっています。
しかも、これはあくまでも最低必要な睡眠時間です。16時間以上眠ってすくすく育っている赤ちゃんもいます。
ところが、睡眠財団の調査によると、アメリカの赤ちゃんの約半数は1日に12時間以下しか眠っていません。
これは深刻な問題です。
1日12時間しか眠っていない生後6カ月の赤ちゃんは、人生最初の1年間で合計数百時間も睡眠が足りなくなるからです。さらにこの調査から、睡眠不足の赤ちゃんたちの家族は、もっと寝てくれればいいのにと思ってはいますが、子どもが実際に睡眠を「必要としている」ことには気づいていないこともわかっています。