長期政権になるはずだった岸田政権の誤算
政界の一寸先は闇だ。岸田政権は昨秋の衆院選、今夏の参院選に相次いで圧勝したばかりである。今世紀に入り、衆参選挙を勝ち抜いた首相は小泉純一郎、安倍晋三、そして岸田文雄の3氏しかいない。
小泉・安倍両政権は2度目の衆院選に圧勝して盤石の体制を築いた。岸田政権もどこかで衆院解散を断行して勝ち抜けば長期政権に突入するはずである。
ところが、現下の岸田政権にそのような気配はみじんもない。
旧統一教会問題と物価高が直撃して内閣支持率は続落し3割前後をさまよう。たった1カ月足らずのうちに山際大志郎経済再生相(麻生派)、葉梨康弘法相(岸田派)、寺田稔総務相(岸田派)が失言や政治資金問題で相次いで辞任に追い込まれ、いまや瀕死の状態だ。急坂を転がり落ちるとはこのような状況をたとえて言うのだろう。
寺田氏の後任に起用された松本剛明総務相(麻生派)にも政治資金問題がいきなり浮上。マスコミ各社は新閣僚のスキャンダルを物色するモードに入った。野党ばかりか与党からも「この内閣はもう持たない」と見限る声が噴き出す。
岸田首相は政権基盤を立て直すため、年末年始に内閣改造・自民党役員人事を行う検討を始めたと報じられているが、いつまで持つかわからない泥船内閣にいまさら好んで乗り込む間抜けな政治家はそう多くない。
ましてそこはスキャンダル探しが渦巻くレッドゾーンだ。ひとたび疑惑を追及されたら岸田首相は守ってくれない。さらし者にされて捨てられる。山際氏、葉梨氏、そして寺田氏のように。
もはや自民党内から見放されている
寺田氏に代わって総務相に就任した松本氏は民主党政権で外相を務め、自民党に転身して初めての入閣である。
彼が新大臣として臨んだ参院本会議の閣僚席でいきなりウトウトと居眠りする姿をマスコミに激写されたのをみて、久々の大臣就任で意気軒昂としているどころか、自民党における身元引受人である派閥の親分・麻生太郎副総裁に命じられて渋々引き受けたのではないかと私は推察した。