――「中国すごいんだぞ」というメッセージを込めすぎて、相手が鼻白む心配もないですね。また、他のソフトパワーである古代の出土文物や美術品は、ある程度の関心がある人ではないと惹きつけられません。

【家永】中国の伝統や文化を根拠にしておらず、海外で受けていることから外交ツールに昇華されたのがパンダです。そこが最大の強みでしょう。中国への関心や文化的素養を度外視した部分で、単純に人気がある。しかも、理解に際しての知識は不要で、中国という国の存在さえ知らない3歳の子どもでも惹きつけられる。

パンダ、日本で受け入れを反対される

――もっとも日本の場合、1980年代ごろまでは凄まじかったパンダの神通力も、近年はすこし陰りが見えている気がします。仙台では地元に地盤を持つ保守系議員がレンタルパンダの受け入れ反対を持論にしていましたし、それが理由かは不明ですが事実として受け入れはおこなわれていない。沖縄でも結局、パンダ受け入れの話が流れたようです。

【家永】仙台も沖縄も、地元に推進派がいたことで話が出たわけですから、反対と賛成の両方の意見があるのだと思います。ただ、中国側としては、パンダが必ずしも歓迎されない状況で送ることに外交的なメリットを感じなかったのだと私は推測します。沖縄の場合、そもそも誘致派が選挙で負けていますしね。

――安倍晋三氏がまだ存命で総理大臣だったときに、習近平を国賓として招く予定がありましたが、仮に習近平訪日が実現していれば、あれが最後のチャンスだったのではないでしょうか。

【家永】私も次にパンダが日本に来るならあのタイミングだと思っていました。事実、日中間でパンダ協力をおこなう話は、2018年の安倍首相訪中時に話題に出たと、日本の外務省ホームページにも書いてあります。国賓訪日のときに「○○動物園に受け入れる」といった正式発表がなされた可能性も、充分にあり得たと思います。しかし、コロナ禍と国内外の情勢の変化によって習近平訪日それ自体が棚上げになり、パンダの件も暗礁に乗り上げています。

会談を前に握手する安倍晋三首相(左・当時)と中国の習近平国家主席
写真=時事通信フォト
会談を前に握手する安倍晋三首相(左・当時)と中国の習近平国家主席=2019年12月23日、中国・北京の人民大会堂