「入院してもいいし、家にいてもいいよ。どちらにしても治療は変わらないから」と医師が言えれば、患者さんの多くは「家にいたい」と言うものです。

そのような対応をしていたら、訪問診療の数がどんどん増えたのです。

住民のニーズに合わせてフレキシブルに訪問診療・訪問看護が提供できる体制になった。

つまり医療の質が変わったということが、このデータから一目でわかるわけです。

病院閉鎖で救急車の出動件数も減った

全国の救急車の出動件数は右肩上がりに増えています。

これにはわかりやすく明確な理由があります。高齢者の数が増えているからです。

自治体によっても違いますが、救急搬送される人の6割ほどは高齢者なのです

これは全国平均値ですので、高齢化率の高い地域に行けばその割合はもっと高くなるでしょう。

したがって高齢者の数が増えれば、救急車の出動件数は増えて当然です。

ちなみに夕張市の場合、財政破綻により人口は激減しましたが、高齢者の数は増えました。にもかかわらず、救急車の出動件数が最終的に、病院閉鎖前のほぼ半分にまで減ったのです。

実際、熱中症や誤嚥ごえん性肺炎などは、家で点滴をしても病院で点滴をしても、治療効果は変わりません。

森田洋之『日本の医療の不都合な真実』(幻冬舎新書)
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ですので、先に述べたように、在宅医療の患者さんたちには「家でも処置できるけれど、病院に来てもいいよ。どちらでもいいよ」と言っていました。

するとほとんどの人が「家にいたい」と言うのです。

結果的に、救急車による「搬送」でなく、医師が緊急で家に行って診察・治療する「往診」、定期的に訪問する「訪問診療」の体制に徐々に変わっていきました。

高齢者が増えたのに救急車の出動件数が減ったのは、こういう背景があります。

こうした現象がわかりやすく起きたのは、日本ではおそらく夕張が初めてだと思います。

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