プーチン、アメリカに挑むも、米国民は「関わりたくない」
2月21日には、「ウクライナのゼレンスキー大統領はアメリカの単なる操り人形だから、話をしても意味がない。問題はアメリカだ」という主旨の演説をしました。
つまりロシアは、アメリカの覇権に挑んだのだとわかります。これまで、イランのハメネイ師や北朝鮮の金正恩総書記など何人かの指導者がアメリカに挑みましたが、これだけ大規模な挑戦はありませんでした。
ではアメリカは、今回の事態をどう受け止めているのか。
AP通信が行ったアメリカの世論調査によると、ウクライナ情勢で「米国が主要な役割を果たすべきだ」という回答が26%にとどまった一方で、「小さな役割を果たすべき」は52%、「役割を果たすべきではない」との回答は20%でした。
アメリカ国民の大半は、こんな戦争に関与しないでほしいと思っているのです。
トランプなら電話をかけて直にディールする
トランプ前大統領が掲げた「アメリカ第一主義」は、国民が共有する感覚です。トランプ氏は、国民が進んで選び出した大統領だったのです。
そのトランプ氏は当初、プーチン大統領に理解を示していました。
ロシアが軍事侵攻を始めるに先立ち、ウクライナ東部で親ロシア派武装勢力が実効支配してきた「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」を独立国家として認める大統領令に署名したことについて、22日、トークラジオ「C&Bショー」のインタビューでこう言いました。
「プーチンはウクライナの広い地域を『独立した』と言っている。私は『なんて賢いんだ』と言ったんだ。彼は(軍を送って)地域の平和を維持すると言っている。最強の平和維持軍だ。我々もメキシコ国境で同じことをできる」(2月23日・朝日新聞デジタル)
平和維持を名目に軍を展開したロシアの手法は、メキシコ国境の不法移民対策に応用が可能だという考えを示したのです。
さすがにロシアがウクライナに軍事侵攻した後の2月26日の演説では、「ロシアのウクライナへの攻撃は、決して許してはならない残虐行為である」と非難したものの、
「プーチンは賢い。問題は我々の国の指導者たちが愚かなことだ」
「プーチンは(バイデン米政権の)情けないアフガン撤退を見て、無慈悲なウクライナ攻撃を決断したことは疑いない」
「私は21世紀の米国大統領で、任期中にロシアが他国に侵攻しなかった唯一の大統領だ」
「私が大統領ならこれは起きなかった」(2月28日・同前)
などと語って、バイデン政権やNATOの対応を批判しています。
トランプ氏の見方は、意外と事柄の本質を突いているといえます。
要するに「俺だったらすぐプーチンに電話をかけて、直にディールをする」と言いたいのでしょう。きちんと取引していればこんな事態に至らなかったという指摘は、トランプ氏の言う通りです。
トランプ氏ならばモスクワに飛んで行ってプーチン大統領と会談し、「ロシアがウクライナに軍事介入するならば、アメリカも軍を送る。アメリカ第一主義はひと休みだ」と言ってプーチン大統領を脅したうえで、取り引きを持ちかけ、戦争を回避したと思います。