これからも繰り返しキャンセル騒動は起きる

ひとがステイタスを誇示する方法には、「支配(権力)」「成功(社会・経済的地位)」「美徳(道徳)」の三つがある。

このうち権力の獲得は誰でもできることではないし、成功のステイタスには資産(豪邸やスーパーカー)や評判(SNSのフォロワー数)などの証拠(エビデンス)が必要だ。

それに対して道徳的なステイタスの獲得は、「悪」を叩けばいいだけなのだから、誰でも(匿名でも)可能なのだ。

橘玲『バカと無知』(新潮新書)
橘玲『バカと無知』(新潮新書)

そう考えれば、これからも繰り返しキャンセル騒動は起きるだろうし、欧米では現にそうなっている。それに対して個人や企業にできることは、大衆の「正義の鉄槌」が自分のところに振り下ろされないようにマネジメントすることだけだ。

リベラル化によって誰もが「自分らしく」生きられるようになれば、一人ひとりの利害があちこちで衝突し、人間関係は複雑になっていく。政治は利害調整ができずに渋滞し、行政システムは市民から批判されないよう巨大化・迷宮化し、ひとびとの「生きづらさ」だけが増していく。

リベラル化を人類にとっての光だとすれば、光が強ければ強いほど影も濃くなるのだ。

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