どん底に大地あり

私は旅が好きで、よく長崎へも旅行をしたものです。観光のついでに寄った如己堂にょこどう

如己堂は『どん底に大地あり』の書を遺してこの世を去った永井隆博士(1908~1951)が起居した二畳ほどの小さな建物。

聖書の「己の如く隣人を愛せよ」を生きる指針としたことから命名されました。

永井博士は長崎医科大学で放射線医学を専攻、研究治療の影響で放射線被曝して慢性骨髄性白血病で余命3年と宣告されます。

不安な高齢者の手
写真=iStock.com/kazuma seki
※写真はイメージです

そして長崎市に投下された原子爆弾で、妻を失い、本人も重傷を負いましたが、医者として被災者の救護活動を行います。

その後は寝たきりの状態になり、残された道は「書く」ことしかなく執筆活動を始めます。『長崎の鐘』『ロザリオの鎖』『この子を残して』など17冊もの本を書き上げて、その収入の大半を長崎市の復興に寄付されました。

はかなくも終戦から6年後に永眠。

私は「長崎の鐘」の歌を聴くと、とても切なく魂が揺さぶられる思いをしていました。

NHKの朝ドラ『エール』で永井隆博士と音楽家の古関裕而こせきゆうじさんとのやりとりを観て、より深い生き様を知ることになります。

どんな思いで白血病と闘い、どんな思いで被爆した妻を送り、どんな思いで市民を看病し、どんな思いで執筆し、どんな思いで桜を植え続けたのでしょうか。

どん底にも大地はあるのです。

この言葉は永井隆博士ならではの表現だと思います。

私はたくさんの講演を聴いてきましたが、最も心に響き、心に残るメッセージは「あきらめない」ことと「立ち直る体験談」です。

「どん底」にはまった時は“人生のツルハシ”を渡されて「一度限りの人生、もっと深く掘ってごらんなさい」と神様から言われている気がします。

人間、落ちるところまで落ちないと本当に強くはならないものです。大地はいつもあなたの足下あしもとにひろがっています。

<まずはあきらめない心を取り戻す>