「バルマーはアメリカ大手企業で最悪のCEO」

公平を期して言えば、スティーブ・バルマーがCEOとしてしてきたことのほとんどは確かに成功した。彼が大きな身体を活かして周囲を威圧し、常に強硬な態度を崩さなかったおかげで、まだ若い企業だったマイクロソフトが大きく成長できたという面はあるだろう。しかし、企業が若い段階であっても、彼のような態度を取らなければ絶対に成長できないかといえば、そんなことはない。そして、バルマーが10年以上もの任期を終えた今、彼の功績はもはや過去のものになっている。

フォーブス誌は「バルマー氏は今日のアメリカの大手上場企業の中で最悪のCEOだ」と断じた。同様の評価をしていたのはフォーブス誌だけではないだろう。彼の攻撃的な、自分以外はすべて敵とみなすような態度のせいで、マイクロソフトは、スマートフォン、ソーシャル・メディア、クラウドなどが中心となる時代に乗り遅れた。彼の任期中に起きた大きな変化にはすべて乗り遅れたと言ってもいいだろう。もちろん、ITのように変化の速い業界で企業を経営していれば、失敗はつきものだが、それにしても失敗が多すぎた。

問題は、ただ新しい発想を排除したことだけではない。バルマーは元来、極めて知的能力の高い人だ。ビル・ゲイツと同じくハーバード大学出身で特に数学には秀でた才能を発揮した。また、大変な読書家でもある。平静な時には、すぐに怒りを露わにする自分を恥じることもあった。強い気持ちがつい表に出てしまうことがあるのだと自己弁護をしてはいたが。だが、本人がいくらあとで悔やもうと、招いた結果が変わることはない。

バルマーがCEOを退任すると発表した日、マイクロソフトの株価は一気に7.5パーセントも上昇した。

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