悩まされ続けた「パッキン問題」

たとえば、ゴムのような小さなパーツ「パッキン」を、外観から見えるように改良したタイプ(-LA型)。一般には、パッキンがあることで漏れを防げるマグも多い半面、付け忘れるとマグを入れたバッグが濡れてしまうことも。

「改良のはずが失敗も……」と話す堀本さん
「改良のはずが失敗も……」と話す堀本さん(写真提供=象印マホービン)

「だからこそ付け忘れを防ぐべく、見えるように改良したのですが……、デザイン性に違和感をおぼえた方々もいらしたようです」

改良タイプ(-LA型)の発売以降も、パッキンの付け忘れが起こらないようにと、栓を分解してきれいに洗えることを重視したそうですが、その後、時代は変わった。

エコやSDGsなどのブームから、以前より高い頻度で「マイボトル」を持ち歩く人が増え、パッキンは「手入れが面倒」なパーツの一つになっていたのです。

「それを気づかせてくれたのも、消費者の声でした」と堀本さん。

素材が異なる、栓とパッキンを一体化させるのは、業界でも例のない挑戦だったそう。ですが、「手入れのしやすさが重要」だとするナマの声こそが、シリーズを正しい改良へと突き動かしたといいます。

WHYから行動を起こす

海外の多様な分野の講演が無料で見られるサービス「TED Talks」上で、09年、「ゴールデンサークル理論」を紹介したのは、Simon Sinek(サイモン・シネック)。

彼は、成功者(おもにリーダー)の過去の法則に従い、「あらゆる企業や組織が成功するためには、WHY、HOW、WHATの順でコミュニケーションするべきだ」と説きました"How great leaders inspire action", Simon Sinek TEDx Puget Sound, 2009)。

すなわち、まず「WHY(なぜ)」から行動を起こし、続いてそれを囲む「HOW(どうやって)」の輪が、そして最後にそれを囲む「WHAT(何を)」の輪がくるというパターン。

【図表】サイモン・シネックのゴールデンサークル

この構図を「ブランディング」にも応用し、「ブランディングの起点は『WHY』であるべき」「ここは組織のミッションやビジョンと重なる核であり、時間が経っても変えるべきではない」などとするマーケティング会社も、複数あります。