環境負荷量は世界人口の増加と連動している
では世界人口の増加とともに、人間社会はどのぐらいの環境負荷をかけてきただろうか。
図表6は、プラネタリー・バウンダリーと関連する環境負荷量に関し、二酸化炭素排出量、真水消費量、肥料消費量、漁獲量、熱帯雨林消失速度の5つをグラフで示している。これらの統計からは、環境負荷は、世界人口の増加と連動しており、特に戦後に急増してきていることがわかる。
実際に、イギリスでは、1991年にOptimum Population Trust(現Population Matters)というNGOが発足し、環境のサステナビリティ(持続可能性)のためには、人口増加を抑制することが重要と提唱。人口増加が環境サステナビリティを破壊している大きな原因だと警鐘を鳴らし続けている。
このことは、環境保護の議論において極めて重要であり、“不都合な真実”をつきつけてもいる。例えば、日本でも「江戸時代はよかった。人間と環境の調和がとれた、持続可能な社会だった」とノスタルジーに浸る主張がある。もちろん江戸時代にも様々な深刻な課題はあっただろうが、百歩譲って、環境との調和に関しては、今よりも遥かによかったとしよう。
だが、その日本ですら、江戸幕府成立時に1227万人だった人口は、明治維新時に3330万人と2.7倍に増え、さらに明治維新から現在までの約150年で約1.2億人と3.6倍にまで増えた(*2)。
(*2) 国立社会保障・人口問題研究所(2017)“日本の将来推計人口(平成29年推計)”
世界人口は2100年には104億人にまで増える
世界全体では、1850年の12億人から、現在の80億人へと6.7倍にまで増えた。さらに国連人口部の見通しでは、世界の人口は2050年には97億人、2100年には104億人にまで増えるという(*3)。
そうなれば、将来、食料も、エネルギーも、社会インフラも今以上に必要になる。
このように、私たちのライフスタイルが仮に「江戸時代に戻った」としても、地球上にはもはや6.7倍もの人がいることが大きな違いなのだ。江戸時代と全く同じ生活をしたとしても、6.7倍もの資源が必要となる。これが“不都合な真実”だ。たとえ、世界が産業革命より前の社会に戻ったとしても、人口は勝手にもとには戻らない。
(*3) 国連人口部(2022)“World Population Prospects 2022”