85歳以上の2人に1人が認知症を発症する

日本には、2020年時点で、認知症を発症している人が約500万人いて、65歳以上では約7人に1人(約15%)の割合です。さらに2025年には、その数は730万人に増加し、65歳以上の方のうち、5人に1人(20%)の割合になると推計されています。

歩行補助器具を持つ高齢者
写真=iStock.com/SetsukoN
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高齢者の増加に伴い、認知症の人の数が増えることは当然ですが、なぜその割合まで増えるのか? 不思議に思いませんか?

それは、認知症の有病率が、年齢が上がれば上がるほど高くなり、日本は平均寿命が延びている(75歳以上とか特にお年を召している方の割合が増えていく)からです。

すでに65歳以上の方の15%が認知症だと書きましたが、実は65~75歳未満に限れば有病率は3%にすぎません。75~80歳未満でも約10%、80~85歳未満で約22%、85歳以上で50%に達します。

確実な予防法を実行できる人はなかなかいない

ときどき、「認知症になるくらいなら、死んだほうがマシだ」という方がいらっしゃいますが、それが本音で本気でそれをかなえたいのであれば、75歳までに死ぬべきです。そうすれば、97%の確率で「認知症になる前に死にたい」という希望が実現できます。

でもそう言っている方が60代で病を患うと、「病と闘って勝つこと」を目指したりします。それは客観的事実として、「せっかく訪れたチャンスを、自ら逃している状態」です。

どうやら、自分が言ったことを忘れて、あべこべな行動をとるのは、認知症の人に限らないようです。それを責める気も病と闘う人を否定する気もありません。しかし、自分の言葉に責任を持てないのであれば、現に認知症の人や、そのご家族の姿を見ながら、「こうなるくらいなら死んだほうがマシだ」などという、人の尊厳を踏みにじる発言は控えるべきです。

なによりも、家族の苦悩や頑張りのおかげで、認知症を持つ本人の生活に、しあわせの瞬間があることは、紛れもない事実なのですから。

先述した通り、認知症を予防するいちばんたしかな方法は「長生きしないこと」です。でもそれは多くの方にとって非現実的です。適度な運動などといった現実的な予防についても、「認知症になる確率を少し下げられる場合がある」程度の認識がよいと思います。「できる予防をすべてやったら認知症にならない」「やらなかったら認知症になる」ということはありません。