首相自ら「脱マスク」アピールも国民は及び腰

岸田文雄首相が「脱マスク」に躍起になっている。9日には世界最高峰の自動車レース・フォーミュラワン(F1)日本グランプリ(三重県鈴鹿サーキット)を視察し、マスクを外してあいさつに立った。世界に広く配信されるF1の映像を通して「日本はもう大丈夫」と伝えたかったのだろうか。

一方で大半の国民は依然、マスク着用を続けている。筆者の感覚値だが脱マスクを先行実施できた国々では着実に経済復興を遂げており、これからは人々が脱マスクに向けた意識をどう持っていくかが課題だと考える。

2022年9月8日、新宿駅周辺の横断歩道を渡る人々
写真=EPA/時事通信フォト
2022年9月8日、新宿駅周辺の横断歩道を渡る人々

筆者の住む英国で9月に行われたエリザベス女王国葬の様子を思い出してみると、式典に参加した王室メンバーをはじめ、行進参加の衛兵や軍隊、そして沿道の群衆を含むほぼ全員が“マスク着用なし”で行事に関わった。日本でも関西地区で視聴率20%近くをたたき出したので、自分の住む国とはまったく違う光景を目にした人も多かったのではないだろうか。

英国では今年2月の段階で「陽性でも報告する義務なし」と方針を決定、新型コロナウイルスを「風邪同様の位置づけ」にランクダウンしている。運悪くかかってしまった場合は、医療機関に病状を説明し、オンラインなどで遠隔診療を受けた上で、必要に応じて薬剤投与を受ける体制となっている。

「屋外ではマスク不要」なのに、いざ外すと…

日本国内では5月以降、厚生労働省がマスク着用ルールを明文化するようになった。現在、屋外では季節を問わず「原則不要」、屋内では距離が確保でき会話をほとんど行わない場合を除き、「マスク着用」の方針を打ち出している。

ところが現実には、一般的に日本人が持つとされるある種の「同調意識」から逃れられない人が多いのか、厚労省の期待に反し、脱マスクに踏み込んでいる人はそうそういないように感じる。