不安を打ち消す家飲みで逆流性食道炎に
「あー、逆流性食道炎ですね」
胃カメラの際の鎮静剤でぼんやりしていた頭が、この一言で一気にクリアになる。忘れもしないコロナ禍の胃カメラ検査。
それまで胃に関しては何の疾患もなかった。しかし、緊急事態宣言の発令により、仕事のすべてが飛んでしまい、失職不安を打ち消すため、あろうことかお酒に逃げ、逆流性食道炎になるほど飲んでしまったのだ。
自粛期間中は外飲みができないので、仕方なく家飲みオンリーとなる。最初のうちはビール程度で満足していた。しかし、外出が制限されるようになると、業務用の5リットルのウイスキーをネットで買い、まだ日の高いうちから濃い目のハイボールを飲むようになっていった。
気づくと、大きなボトルはわずか2週間たらずで空に。さすがに「これはまずい」と自分でも思うようになった。タイミングよく胃カメラ検査があったことで、自戒して酒量を減らせたが、検査がなかったら確実にアルコール依存症になっていただろう。この時、初めて自制がきかない家飲みの怖さを痛感した。
「居酒屋離れ」で「家飲み」が主流に
現在は感染者数が減り、酒場にだいぶ人は戻ってはきているものの、コロナ禍と相次ぐ値上げのダブルパンチで、「居酒屋に行く頻度が減った」「家飲みがメインになった」という声をよく耳にする。実際、総務省が発表した2人以上世帯を対象にした「家計調査」(2020年5月)によると、酒類の支出額は前年比で25.6%も増えている。
酒飲みにとって、家飲みはパラダイスだ。その魅力は、何といっても人目を気にせず、自由にお酒が飲めること。終電時間や財布の中身を気にしなくていいので、家にあるお酒をかたっぱしから好きなだけ飲める。
しかし、この家飲みの最大のメリットとも言える「人目を気にせず、自由に好きなだけお酒が飲める」ことこそが、実は大きな危険をはらんでいるのだ。
平常時であれば、さして問題はない。二日酔いになる程度で済む。しかし、今は感染者数こそピークアウトしたといっても、コロナ禍であることに変わりはない。しかも3年近く、何かと我慢を強いられた状態が続いているのだ。そんな中で自由度の高い家飲みとなれば、これまで以上に酒量が増えてもおかしくはない。現に私がそうだった。