信用される話しのスピードは「ゆっくり」か「早く」か

続いて、話し方の「速度」を見ていきましょう。

マーケティングの世界では、ゆっくり話すよりも速く話したほうが説得力が増すことが、多くの経験的な証拠によって裏づけられています。

いくつかの研究によると、速く話す人のほうが能力や信頼性が高いと判断される傾向にあります。話すのが速い人は、より知的、知識豊富、客観的と見なされたり、より真実味があり、真剣であり、説得力があると見なされるのです。

こうした研究が行われるようになった背景には60-70年代のテレビの爆発的な普及があります。

この時期は、企業もテレビに広告を積極的に出稿したい時代でした。ただ、放送時間は限られています。そこで、何をしたかというと、テレビ局は広告そのものの音を編集しました。早回しをし、収録された実際の時間よりも放送時間を圧縮し、多くのCMを流したのです。

そうした早回しした広告は、人々にどのような影響を与えたかに注目が集まり、研究が進みました。そして、それらの研究で、人々は通常の話し方よりも、適度に速い発話を好むことがわかりました。

なぜ速い発話が好まれるのか

聴き手は話を早くされると、聴き取りにくいので、理解しようと、ついていこうとします。注意を向けざるを得ません。

これは本書の第1章、第2章で強調した点とも関係します。人間は自分から情報を積極的に取りに行くのは面倒くさがります。ゆっくり話された内容を、ゆっくり理解するほうが負担なのです。

一方、早く話されると自分は何もしなくても、無意識に注意が引っ張られます。自分が追いかけなくてすむのです。このプロセスが負担免除されるため、気が楽になります。

通常の速度よりも速い発話のほうが、その処理に大きな力を割くことが研究からわかっています。時間圧縮により早くなった広告のほうが、リスナーはより良く思い出せた上に、広告に対してより好意的にもなりました。これは発話が速くなると注意が引っ張られ、思わず聴いてしまうので内容がよく理解できるからです。