「占いはなぜ、当たるのですか?」

しかし、この本が不思議に心に刺さる秘密はどこにあるのだろう。

僕自身は「占星術家」なので、簡単に「当たるから」と言えば済むのだろうが、普通はそうはいかない。不思議に当たるような感覚はあるが、これはあくまでも「占い」である。そこに実証的、あるいは科学的な根拠があるわけではない。合理的に考えれば、それは一種のお遊びでしかない。

だが、ここで少しだけ、この本が暗示していることを深堀りしてみたい。

この本の最大の特徴は、普通の星占いより「詳しい」ことにある。よく星占いは、人類を12のカテゴリーに大雑把に分けるだけのものだから、そんなざっくりした分類で妥当性のあることを言えるわけない、という批判をされることがある。本書は通常の星座に月星座を加えたものだから、144のパターンがあるので、より「詳しい」ものだと言うことは確かにできる。

しかし、それでもわずか144である。70億の地球人類をふるいにかけるにはあまりにも目が粗い。「正確さ」の根拠としては弱いと言わざるを得ない。

人間はひとつの小さな宇宙

僕は本書の魅力は、その正確さというよりも、むしろ、この性格を描写する仕組みそのものにあると考えている。

繰り返しになるが、本書は「太陽星座」と「月星座」の2つを合わせて見ていくことが特長だ。

占星術の伝統では、太陽は自分自身の中の意識的な側面、旧来の社会のなかで「男性的」と形容されてきた性質や、「公」の面をつかさどっているとされる。一方、月は無意識的、本能的、よりプライベートな側面を表しているとされるのだ。

言い忘れたが、占星術では一人の人間はひとつの小さな宇宙であると考えている。マクロコスモス(大宇宙)とミクロコスモス(小宇宙)の神秘的な照応関係を、古代からの占星術は前提としているのである。

言ってみれば、一人の人間の中にはさまざまな惑星や星座が存在し、多重人格、副人格とでもいうべきものを表しているとイメージしているのである。

こうした占星術の考え方は実に古いものであるが、見方によってはまことに現代的、あるいはポストモダン的な人間観であるとはいえないだろうか。