「汚スーツ」「セレブ妊活」ににじむ悪意

日本にいたらこの状況は変えられない。眞子さんはそう悟ったのだろう。結婚し、皇籍離脱した10月26日、記者会見で「圭さんの留学については、圭さんが将来計画していた留学を前倒しして、海外に拠点を作ってほしいと私がお願いしました」と語った。

だが、ニューヨークでも2人は放ってはおかれない。圭さんが3度目の司法試験を受けた2022年7月、英国のデイリー・メール紙が有名な食料品店を出て、手を繋いで歩く2人の写真を配信した。日本の週刊誌がその写真を使い、2人のことを報じる。

ニューヨークの街中を歩く小室眞子さん・小室圭さん夫妻
写真=ABACA PRESS/時事通信フォト
ニューヨークの街中を歩く小室眞子さん・小室圭さん夫妻

記事の見出しから近況をまとめると、圭さんは「汚スーツ」で出勤、眞子さんは「皇族ビジネス」の野望を持ちつつ「セレブ妊活」中――となる。悪意はダイアナ妃に向けられたものより上では? そう思うほどだ。

「自分らしくいたい」と望んだ2人の覚悟

眞子さんとダイアナ妃のもう一つの共通点は、「自分らしくいたい」という思いの強さではないだろうか。

ダイアナ妃には有名なインタビューがあって、もちろん『プリンセス・ダイアナ』にも登場する。1995年、イギリスの公共放送BBCに出演、「この結婚には3人が関わり、少し窮屈でした」と語った。噂になった男性とは「友情以上の関係?」と聞かれ、「はい、そうです」と答えた。不倫行為をしたのかという質問には、「彼を愛していましたから」と答えた。

日本で言うならNHKで、双方の不倫を語るとは。離婚はこの翌年だから、王室を離れることが念頭にあったのかもしれない。逆に大胆に自分をさらけ出すことで、離婚への踏ん切りをつけたのか。いずれにしても「ここでない、自分らしい道」への思いが強くなければできない行動に違いない。

だから眞子さんに重なる。「納采の儀」も「一時金」も辞退して、結婚を選んだ。先述した会見で眞子さんは、「結婚は、自分たちの心を大切に守りながら生きていくために必要な選択でした」と語った。心を守って生きていくとは、自分らしく生きていくということだろう。

『スペンサー ダイアナの決意』はドキュメンタリーではなく、「実際の悲劇に基づく寓話ぐうわ」をうたっている。描かれたのは、ダイアナ妃が王室を出ることを決めるクリスマスの3日間。タイトルの「スペンサー」は彼女の旧姓で、「本来の自分」の象徴でもあるのだろう。

実際にダイアナ妃が告白した摂食障害や自傷行為をリアルに見せ、皇太子妃であることの苦しみを描く。苦しみの本質が描かれたのが、エリザベス女王との会話のシーンだった。