※本稿は、野口悠紀雄『どうすれば日本人の賃金は上がるのか』(日経プレミアシリーズ)の一部を再編集したものです。
日本の平均賃金は先進国の5割から8割程度
アメリカの賃金が著しい高さになっている。では、他の国はどうか? OECDが加盟国の平均賃金(Average annual wages)を公表している。いくつかの国について2020年の数字を示すと、つぎのとおりだ(2021年基準実質値、2021年基準実質ドル・レート)。
日本3万8194、韓国4万4547、アメリカ7万2807、ドイツ5万6015、フランス4万6765、イギリス4万8718、イタリア3万8686。人口が少ない国を見ると、スイス6万6039、オランダ6万1082、ノルウェー5万7048、アイルランド5万382、スウェーデン4万8206。
日本の平均賃金は、ここに挙げたどの国より低くなっている。トップのアメリカと比べると、52.5%でしかない。大雑把にいえば、「日本の水準は先進国の5割から8割程度」ということになる。
日本の賃金についてのもう一つの問題は、「上昇率が低い」ことだ。それを見るために2000年における各国の値を示すと、つぎのとおりだ(単位はドル)。
日本3万8168、韓国3万326、アメリカ5万7499、ドイツ4万7711、フランス4万76、イギリス4万0689、イタリア4万35。これと2020年の数字を比較すると、イタリアの数字は低下しているが、他の国は著しい上昇になっている。それに対して、日本は、この20年間に、ほとんど横ばいだ。
このため、2000年には日本より低かった韓国に抜かれてしまった。その他の国との乖離も拡大している。日本の国際的な地位は、この20年間で低下したことになる。こうした現状を見ると、「令和版所得倍増計画」によって先進国並みになりたいと考えるのは、日本人にとってごく自然な欲求だ。
しかし、このままでは、先進国の賃金水準はさらに高くなってしまい、差はますます開いてしまう。賃金が高い先進国にキャッチアップするためには、成長率が先進国より高くなることがどうしても必要だ。それを実現するには何をしなければならないかを、考える必要がある。そのためには、なぜこうした状況になってしまったのかを、考える必要がある。