賃金では韓国にも抜かれ、一人あたりGDPでも抜かれることになる
さきほど見たのは平均賃金である。では、一人あたりGDPではどうか?
2022年になってからの急激な円安のため、日本の国際的地位が大きく低下している。1ドル=130円台になると、日本の一人あたりGDPが、韓国やイタリアに抜かれる可能性が高い。まず韓国との関係を見よう。
2021年においては、日本の一人あたりGDPは4万704ドルで、韓国3万5196ドルより15.6%ほど高かった(図表1参照)。
ところが、2022年になって円安が進んだ結果、この状況が大きく変わっている。22年4月中旬のレートで計算すると、韓国との差は7.2%と、大幅に縮まっている。円安がさらに進んで1ドル135円になり、ウォンのレートが変わらないとすれば、日本の一人あたりGDPは、韓国より低くなる。
さきほども述べたように、賃金では、日本はすでに韓国に抜かれている。それだけでなく、「豊かさを示す最も基本的な指標」である一人あたりGDPでも抜かれることになるのだ。
アベノミクスが日本経済にもたらしたもの
台湾との間でも、似たことが起こる。2021年においては、日本の一人あたりGDPは、台湾より21.9%ほど高かった。22年4月中旬のレートでは、この値が9.1%になった。1ドル135円になれば、台湾の値は日本とあまり変わらなくなる。このように、日本が韓国や台湾よりも貧しくなるという事態は、十分あり得ることなのだ。
G7(先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議)の中ではどうか?
2021年では、最下位はイタリアで、日本はこれより14.4%高かった。ところが、22年4月のレートでは、この値が6.7%になった。1ドル135円になれば、イタリアのほうが高くなる。すると、日本はG7の中で、最も貧しい国になる。G7は先進国の集まりということになっている。日本がそこにとどまれるかどうかの議論が出てきたとき、日本はどう反論すればよいのだろうか?
アベノミクスが始まる直前の2012年、日本の一人あたりGDPは、アメリカとほとんど変わらなかった。そして、韓国は日本の51.8%、台湾は43.2%でしかなかった(図表2参照)。
それから10年経って、前記のように、この関係は大きく変わったのだ。アメリカの一人あたりGDPは、日本の1.73倍になった。そして、すでに見たように、韓国と台湾の一人あたりGDPが、日本とほぼ同じになっている。アベノミクスがもたらしたものが何であったかを、これほど明確に示しているものはない。