2022年上半期(1月~6月)にプレジデントオンラインで配信した人気記事から、いま読み直したい「編集部セレクション」をお届けします――。(初公開日:2022年6月25日)
今年5月、関東在住の向坂壱さん(仮名・50代)は戸籍の性別を女性から男性に変更した。幼少期はママごと遊びもすれば、戦隊ごっこもしたが、小学校高学年から中学卒業までは自分の性自認に深く悩んだ。その後、パニック症を発症。男性パートナーとの交際を経て結婚するが、新たな精神的な病の発作に見舞われてしまう――。(前編/全2回)
ある家庭では、ひきこもりの子供を「いない存在」として扱う。ある家庭では、夫の暴力支配が近所に知られないように、被害者の家族全員がひた隠しにする。限られた人間しか出入りしない「家庭」という密室では、しばしばタブーが生まれ、誰にも触れられないまま長い年月が過ぎるケースも少なくない。そんな「家庭のタブー」はなぜ生じるのか。どんな家庭にタブーは生まれるのか。具体事例からその成り立ちを探り、発生を防ぐ方法や生じたタブーを破る術を模索したい。
今回は、トランスジェンダー男性(Female to Male)の事例を紹介する。彼は小学校高学年から中学卒業まで、自分の性自認に深く悩みながらも、高校入学を機に、性自認について考えることを強制的に中止。やがて、パニック症を発症。男性パートナーとの交際を経て結婚し、2度の妊娠・出産を経験すると、かつてないほどのひどい離人症の発作に見舞われた。彼の家庭のタブーはいつ、どのように生じたのだろうか――。
性別を意識させない子
出生時の体の性別は「女性」だった関東在住の向坂壱さん(仮名・50代)は、明朗快活で、人見知りとは無縁な子供だった。興味の赴くまま、ままごともすれば、戦隊ごっこもする。ジャングルジムのてっぺんから飛び降りたり、冒険と称して廃屋に忍び込んだり、遊園地の柵を乗り越えたりして、幼少期は生傷の絶えなかった。
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